第一章 再会(5)
付き合っていた彼のことは、会社の同僚にも話していたため、不倫であったことは言いたくない。
社内でも少しプライベートな付き合いのある私だから話せるのだろう。
少しでも彼女の気持ちが収まるような言葉を選んで、投げかけた。
「大輔さんも、かなり鈍感ですからね。」
絵美が少し笑って言った。それを聞いて、私は少し安心した。彼女が笑顔を取り戻してくれたことが嬉しかった。
「絵美ちゃんは、結構、人気があるから、すぐに次の彼が見つかるよ。」
私は軽く励ますつもりで言ったが、絵美は肩をすくめた。
「人気があるって、誰にですか?誘ってくれるのは、いつもおじさんばかりなんですけど。」
「僕が絵美ちゃんと食事に行くと『昨夜、絵美さんと飲みましたよね』って、次の日に必ず誰かに根堀、聞かれるよ。」
「それ、誰ですか?田中さんなら、結婚していますよね。私、既婚者にモテても嫌ですよ。」
絵美が少し本気で怒った口調で言った。どうやら、また傷口に触れてしまったらしい。
「田中も絵美ちゃんのことが気に入っているけど。あと、佐藤とか、山田とか。確か、彼ら独身だよ。」
「いえいえ、独身だからっていい訳じゃ。」
「それは、そうだね。」
絵美の表情は真剣だった。彼女は一瞬、遠くを見るような目をしてから、再び私に目を向けた。
「私、しばらくは彼を作らないと思います。」
そう言って、絵美はグラスを持ち上げ、残りの酒を一気に飲み干した。




