第八章 手紙(1)
加代の行方を気にしながら数日が過ぎた。
加代のことについて、母親に嘘をついてしまった後ろめたさもあって、自ら連絡するのを避けていた。
部屋に残された加代の荷物を眺めながら、自分を責める日が続いていた。
仕事から戻ると、集合ポストからはみ出ているチラシが目についた。取り出して部屋に持ち帰るが、ほとんどは不用品処分のチラシや宅配ピザのメニューなので、いつもは放置している。だが、その日はチラシに挟まれて封筒が1通入っていた。差出人の記載はない。宛先には、住所が不完全だが、マンション名と部屋番号、そして私の名前が書かれていた。
ジャケットを脱ぎながら、雑に封筒を開けると、手書きの手紙が出てきた。
「
大輔さん
お元気ですか。加代です。
私は今、長野にいます。
連絡できなくてごめんなさい。
あと、洋平が空き巣に入ったと聞きました。私のせいで本当にごめんなさい。
」
加代からの手紙だった。書き置きで見た、同じ丸文字で書かれた手紙だった。
「
実家に帰ってから、大輔さんの部屋に戻ろうとした日、マンションの近くで洋平を見ました。洋平が大輔さんのマンションを知っていると知って、私は怖くなってそのまま美香先輩のところに行きました。
先輩は、私が流産したことを知っていて、あの彼とは別れたそうです。私に泣きながら謝ってくれました。できる限り私を助けると言ってくれたので、その日はそのまま泊まりました。すぐに帰るつもりだったので、大輔さんの家の電話番号を持っていませんでした。でも、マンションに戻ると洋平がいるかもしれないと思い、怖くて帰れませんでした。
先輩から、長野の農家で住み込みのバイトを募集していると教えてもらい、ここに来ることにしました。
お母さんには電話しました。お母さんから、洋平が大輔さんの部屋に勝手に入って荒らしたと聞きました。私のせいで本当にごめんなさい。
お母さんが、大輔さんに改めてお礼を言いたいけど、連絡先が分からなくて困っているようでした。
」
とにかく、加代は長野にいることがわかり、私は安心した。




