第七章 決意(7)
加代の実家に電話すると、母親が出た。
私の声で、すぐに私だと分かったらしい。
「新年おめでとうございます。すっかり加代がお世話になっております。私からご挨拶しなければならなかったのですが・・・。加代はそちらでご迷惑をかけていませんか?」
加代のことを聞こうと思った矢先、加代がこちらにいる前提での会話になり、思わず「あっ、はい。こちらで元気にしています」と答えてしまった。
加代が実家に戻ったことについては、私が尋ねる前に母親が話してくれた。加代は年明けに一度戻ってきて、少し荷物を持って翌日には出て行ったという。
私は電話したのは年始の挨拶だったと伝え、少し会話を交わして電話を切った。
加代はすぐにこちらに向かったようだ。しかし、私の部屋には戻ってこなかった。一度「元気にしています」と嘘を言ってしまった以上、「まだ戻ってきていない」とは言いづらい。
数日後、理恵の新しい部屋が決まった。彼女は、海外旅行用のスーツケースと大きめのボストンバッグに残った荷物を詰めて引き取っていった。クローゼットの中の理恵の洋服がなくなり、代わりに私の部屋に出ていた服を片付けると、一気に荷物が減り、さらに寂しさを感じた。
もう一度、加代ことを確認するため実家に電話しようと受話器を取ったが、母親が心配するのではとためらった。
翌日、事件が起こった。
朝、仕事から戻ると私の部屋が荒らされていた。その惨状を見て、空き巣に入られたとすぐにわかったが、同時に犯人が洋平であることも判明した。テーブルに「かよをだせ」と油性マジックで書き残していたからだ。
どうやら洋平はまだ加代を探しているらしい。
私は、部屋をそのままにして、加代の母親が起きそうな八時頃を待って電話をかけた。
「昨日、僕が仕事に行っている間に、洋平が私の部屋に勝手に入って荒らしていきました」
挨拶もそこそこに、起こった事態を説明した。母親も私からの連絡を待っていたという。
二日前に、洋平が加代の家に押し入り、加代を探して部屋を散々荒らしたらしい。加代がいないと知ると、彼は出て行ったが、その際、電話機の近くにあった電話帳と一緒に私の連絡先の書かれたメモを持って行ったそうだ。
洋平は加代の家から持ち去った連絡先に片っ端から連絡を入れ、加代の居場所を探していたという。
母親もそのような事態になり、私に連絡を取ろうとしたが、唯一の手段であるメモを取られてしまい、それが絶たれてしまった。
母親はしきりに私に詫びていたが、私も加代が戻っていないことを言っていなかったので、実家に帰ると言って出たまま加代とは会っていないことを伝えた。私の部屋に戻っていると思い込んでいた母親は、相当なショックを受けていた。
警察に通報するか母親に相談すると、洋平が逆上することを恐れ、もし被害が少ないなら通報しないでほしいと言われた。まずは被害状況を確認してから考えると母親に伝え、電話を切った。




