第七章 決意(6)
1月2日はダラダラと過ごしたが、3日は池袋に正月の雰囲気を味わいに出かけた。
初売りで賑わう街に疲れはしたものの、加代にとって気持ちを切り替えるきっかけになったのなら幸いだ。
書店に寄る私を見て、少し苦い顔をする加代に読書を勧めると、読書はあまりしたことがないと言うので、好きそうな本を探しておくと約束した。
私は4日から出勤だ。新年早々に大人数の新年会の予約が入っていたのをすっかり忘れていて、バタバタと支度をすることになった。加代が見送り際に「荷物を取りに一度家に帰る。」と言っていたが、いつ帰るかを聞かずに慌ただしく家を出た。
また、慌ただしい店の営業が今年も始まった。
新年で晴れ着の女性客が、いつもと違った店の雰囲気を彩っていた。予約や飛び込みの団体客で新年早々から忙しくなく営業が終了し、閉店後には店の簡単な新年会が開かれた。1時間ほどの宴席が終わって、家に着いたのは朝7時を過ぎていた。
家を出る際に「実家に戻る。」と言っていた加代のことを思い出し、帰ったのではと思ったが、部屋に入ると加代はベッドで寝ていた。安心して私も寝袋で眠りについた。
目が覚めると、ベッドに加代の姿がなかった。
指に紙が巻きついているのに気づき、それを取って机に置くと、テーブルに書き置きがあることに気がついた。
「荷物を取りに、家に帰りますね。加代。」
壁に吊るされた福袋の洋服や加代の持ってきたバッグも置いてあったので、すぐに戻ってくるだろうと思った。
しかし、加代は、実家に帰ってから2日経っても音沙汰がなかった。ポケベルは、洋平に拉致されていたときに解約したという。連絡する術もないため、気にしつつも仕事の忙しさに、ひたすら加代の帰りを待っていた。
翌朝、仕事が終わって部屋に戻ると、留守番電話にメッセージのランプが点滅していた。
慌ててメッセージ再生のボタンを押すと、加代からのメッセージではなく、理恵からだった。
「もしもし、理恵です。新年おめでとう。今度の日曜に荷物を取りに行こうと思っていますが、都合はいかがでしょうか?まだ実家にいるので、連絡ください。」
少し他人行儀な話し振りは、部屋に加代がいると思って気を遣っているのだろう。
出勤前に理恵の実家に電話して、日曜は在宅しているから大丈夫だと伝えた。
理恵は専門学校を続けるため、改めて部屋を借りる予定で、当面は友人宅から通学するらしい。今回は教科書などの必要な荷物だけを引き取り、部屋が決まった後に残りの荷物を取りに来ると言っていた。
理恵は物への執着心が薄い性格なので、そもそも荷物は少ない。預かっていても邪魔になるものはなかった。
日曜の午前中、約束通りに理恵が荷物を取りに来た。大きなバッグ二つに荷物を詰めて持って行った。部屋の荷物が大きく減ったわけではないが、これまでそこにあった小物がなくなったことに、少し寂しさを感じた。
理恵が昼頃に来ると言っていたので、朝早くから洗濯や片付けなどを済ませてしまい、午後には何もすることがなくなった。
部屋の隅にまとめてある加代の荷物を見ながら、加代からの連絡がないことで頭がいっぱいになっていた。
いつ戻ってくるのかと気になる気持ちが抑えきれず、私は加代の実家に電話した。




