第七章 決意(5)
年越しそばを食べ、テレビでカウントダウンを見ながら新年を迎えた。
「あけましておめでとう。」
とお互いに言って、クスッと笑い合った。
様々な感情が一日に詰め込まれ、精神的にも疲れていたのだろう。一本の缶ビールで酔いが回り、テレビでは初詣の中継ばかりになったので、極度の睡魔に襲われ寝ることにした。
私は、洗ったばかりのシーツのベッドに加代を寝かせ、私は寝袋に入った。
すぐに深い眠りに落ちた。
元旦の朝。
ふと目が覚めると、横に加代が寝ていた。布団が少し下がり、加代の手が私の手を握っていた。小さく柔らかなその手は、以前、池袋で握ったときよりも温かく感じられた。
私がビクッとすると、加代は薄目を開けて私を見た。
「どうした?」
と私が小さく尋ねると、加代は「ありがとう。」と微笑んだ。
「ん?」と聞くと、続けて、「私、行き場所がなくて、大輔さんしか頼れなくて。」と、少し涙声で言いながら、私の手をしっかりと握った。
加代は、私の手を自分の布団に招き入れ、両腕で私の腕を抱きしめた。
私は、加代を抱きしめ返した。加代の心臓の鼓動が感じられ、彼女も私に身を寄せ、私の胸に顔をうずめた。
加代は、私の腕の中で安心したのだろう、そのまま静かに眠りについた。
私も、加代を抱きしめたまま、心臓の高鳴りが加代に聞こえないかと心配しながら、長い時間をかけて再び眠りに入った。
昼ごろに目を覚ますと、加代はまだ私の腕の中で寝ていた。幼い少女の安心した寝顔を見て、やはり加代は私を父親のように思っているのだろうと感じた。加代の無邪気な寝顔に我慢できず、額に軽く口づけをした。加代はそれに気づき、目を覚ました。私は少し焦ったが平然を装って、「おはよう。」という加代に、「うん。」と答えた。
昼過ぎに初詣に出かけることにした。
少し離れたところにある比較的大きな公園に神社があったので、散歩を兼ねて少し遠出だ。大きな車道を何本か横切り、一時間ほど歩くと、露店が並び、その先に参拝者の列が続いていた。
「歩いてお腹が空いたから、先に何か食べようか。」
そう言って、たこ焼きを食べながら、境内の外まで続く参拝の列に並んでいた。
参拝の順番が来ると、賽銭を投げ入れ、「加代が穏やかな一年を送れるように。」と願った。
隣の加代は何を願っていたのだろうか。
私が引いたおみくじは吉だったが、加代は大吉だった。
無邪気に喜ぶ加代の笑顔を見て、晴れ着でも着たらもっと可愛いだろうと想像した。境内の木の枝におみくじを結んでいると、「なんで木に結ぶの?」と加代が聞いてきたので、「神様との縁を結ぶんだよ。」と、昔、母から聞いた話を受け売りした。
「じゃあ、私は持って帰る。」
なぜか判らなかったが、加代は大事そうにおみくじを財布にしまっていた。




