第七章 決意(4)
しばらくして、加代が買い物から帰ってきた。
買い物の量の少なさから、私に気を使ってどこかで時間を潰してきてくれたことがわかる。
理恵と話して理解を得たので、しばらくは私の部屋に泊まることの承諾を得たと伝えた。私の加代への気持ちや、理恵との別れのことは加代には話さなかった。
自分の本心に気づきながら、それを隠して加代と一緒にいることが正しくないと感じていた。
加代は私を父親のように信頼してくれているし、加代の母親も私のことを認めているだろう。だからこそ、私の気持ちは加代の問題が落ち着くまで隠し通すべきだと思った。
自分の自制心を保つために、改めて加代の母親と話をしたいと申し出ると、加代もそれを望んでいたと言った。
加代は実家に電話をかけ、私のことを少し伝えた後、私に替わった。
「加代が本当にお世話になっております。」
母親の声には、どこか信頼が感じられた。
「事情は加代さんから少し伺いました。」
私は簡単に自己紹介をした。自分の両親は長野の田舎で健在で、父親は会社員をしており、私は大学進学で上京。それから一人暮らしをしていること。卒業後に就職したが、転職して今はバーテンダーをしていることなどを話した。
そして、加代から事情を聞き、当分の間家に泊めることを伝えた。夜間は仕事で部屋に居ないことも、男一人暮らしの部屋に娘を泊める母親には、少しは安心材料になるだろうと思った。
母親の話では、以前、加代に内緒で警察にも相談したことがあったが、洋平の暴力は「暴行」の範囲で、仮に裁判などに至っても、執行猶予となり、その後の嫌がらせが悪化する可能性があるため、通報を諦めたのだという。
電話の向こうで、すすり泣く母親の声が聞こえていた。
私はこれからのことはわからないが、できる限りのことは協力すると伝え、私の住所と電話番号を教えて電話を切った。
横で聞いていた加代は「ありがとう」と呟いた。
その声には、感謝の気持ちと共に、少しの安心感が込められているように感じられた。
どうやら、加代にとっても、仕事納めができたようだった。




