第七章 決意(2)
「もしもし、大輔?」
「はい、もしもし・・・。」
「あら、すぐ出たわね。私に電話でもしようとしてたの?」
どこかで私を監視しているのだろうか。
「いや、ちょうど電話の近くにいたから。」
理恵は、実家で少し時間を持て余し、私が何をしているのか気になって電話してきたらしい。心の準備なしに、リングに立ってしまったような気がして、シミュレーション通りに私は何も言えなくなっていた。理恵は帰省してから地元の友人に会っていたなど、他愛のない話を始めた。部屋に二人でいるように、完全に私が聞き役となり、黙って理恵の話を聞いていた。話を切り出せない私には、人の話を聞くことがこれほど楽だとは実感させられた。
「ところで、部屋の大掃除は終わった?」
やはり、どこかで私を見張っているかのように鋭い話を切り込んできた。
「あっ。うん、やったけど・・・。」
私はこういう時、素直だ。
「・・・けど?」
理恵は私の発言の語尾の違和感を見逃さなかった。少し観念して言った。
「ちょっと話したいことがある。」
私はどのように話を続けていいか分からず、再び無言になってしまった。明らかに深刻な話で、しかも言い淀んでいる私を諭すように、
「少し整理できたら、また電話ちょうだい。」
そう言って、理恵は電話を切った。これで一回戦目は終了だ。そして二回戦目へと持ち越しとなった。
理恵に折り返しの電話をこまねいて時、加代が戻ってきた。
理恵と電話をしたけど、また後でかけなおすことになったと加代に伝えた。
加代は、年越しのための食材を買い物に行くと言って、また家を空けてくれた。
私なりに話したいことを整理し、改めて理恵に電話することにした。
呼び出し音が鳴るとすぐに理恵は出た。
「あっ。」 思いの外早かったため、言葉の準備ができていなかった。
「やっぱりそっちは寒い?」
私はうまく切り出せずに誤魔化した。そんな私の話を無視して、理恵が切り出した。
「私と別れたいんでしょ。」
先程の電話を切ってから、一人で考えていたようで、理恵は私の深刻な口調からいろいろなことを想像したらしい。最悪の内容は別れ話だと思ったらしく、もし、別れ話以外であれば、理恵自身のショックも軽減すると考えたらしい。
「そういうことじゃなくて・・・。」
私は、加代のことを話した。暴力を受けていたこと、妊娠と流産の話、実家から出てきて私に助けを求めてきたこと。過去に泊めたことと、今回、理由も聞かずに二泊させたことについては言わなかったが、それ以外は、すべて正直に話した。
そして、加代を助けたいが、自分に正しい判断ができるのか不安でもあり、付き合っている理恵に話すのは当然のことだと伝えた。
「そういうことなら、別れましょう。」
私の話を一通り聞いた理恵の回答はこれだった。私の話をきちんと理解していないと思った。
「別れたいと言っている訳ではなく、これから加代を・・・。」
「いいえ、大輔の話は理解したわ。でも、あなたは、自分の気持ちがわかっていないの。あなたはその加代って子が好きなのよ。」
断定的な理恵の言葉に、私の中で何かが走った。




