第六章 葛藤(7)
店を出ると、すでに日は昇っていた。
私と加代はほとんど言葉を交わさずに部屋に戻った。
加代は控室での睡眠が不十分だったのか、まだ眠そうな表情をしている。
部屋に入ると、加代が目を軽くこすりながら部屋を見回し、「前に来た時とずいぶん変わりましたね。」とつぶやいた。テーブルの上には理恵の化粧品や雑多な物が無造作に置かれており、明らかに女性と暮らす部屋だ。
「ああ、そうだね。」
私は曖昧に返事をし、気まずさを少し感じながら誤魔化した。
「まだ眠いでしょ。少し眠る?」
と聞くと、加代は「はい」とだけ答えた。
彼女が寝袋でもいいと言うので、私は無理にベッドを勧めることはしなかった。
加代の知らない女性と寝るベッドを勧められなかった。
カーテンを閉めても、隙間から外の光が漏れて部屋が薄明るくなる。
理恵が部屋に来たばかりの頃、気を遣ってカーテンを洗濯した結果、生地が縮んでしまい、部屋が真っ暗にならなくなった。薄明かりの中で、加代が寝袋で横になっているのを見ながら、何も聞けずにいる自分がもどかしかった。加代も私を見ているのか、しばらく静かにこちらを見つめていた。
「何も聞かないんですね。」
加代が、私が目を閉じた瞬間にぽつりとつぶやいた。
「何を聞いていいかわからなくて。あと、眠いし。」
と、私は素直な気持ちを言った。
「ありがとうございます。おやすみなさい。」
と、加代が言い、私も「おやすみ。」と返した。
薄暗い部屋の中で、加代の寝顔を見ながら、彼女のことが気になっていた。
テレビの小さな音で目を覚ました。
時計を見ると、すでに十三時を回っている。加代はテレビをつけて、静かに画面を眺めていた。
「お腹すいたよね。」
と私が声をかけると、加代は無言で頷いた。簡単にパンとコーヒーの昼食を用意し、二人で食べることにした。食後、しばらく加代と共にテレビを見ていたが、年末の特別番組ばかりでいつも見る番組とは違っていた。アメ横の賑わいを伝えるニュースが流れる中、会話もなく静かな時間が過ぎた。
仕事に行く時間が近づくと、「もし何かあったときに。」と、テーブルの上にお金を置いて家を出た。
出勤すると、昨夜の従妹について店の皆から冷やかしのコメントを受けたが、「ちゃんと送ったよ」と適当に返した。




