第六章 葛藤(6)
一人で家に帰らせるのは少し不安が残った。
加代の年齢を考えると、新宿の街中で一人にするのも心配だ。
近くのファストフード店で時間をつぶしてもらうことにして、店が開店するまで待ってもらう。店がオープンしたら、客として店で待っててもらうことにした。年末で客も多いから、長時間居ても目立たないだろうと安易に考えたのだ。
二十時過ぎに加代が店に現れた。店の隅のテーブル席に一人で座り、ソフトドリンクを飲んでいる姿が見えた。その様子には、やはりどこか幼い雰囲気が漂っていた。一、二時間程度なら待ち合わせをする客も多いので目立たないだろうと思っていたが、未成年の少女が一人で店に来て、カウンターで洗い物をしている私を気にしている様子はやはり不自然だった。
二十三時を過ぎて客が疎らになった頃、年下の店長が私に声を掛けてきた。
「あの子、大輔さんのことばかり見ているけど、知り合い?」
「いやぁ。」
一旦は白を切った。
しばらくして、再び店長が寄ってきて、「やっぱり知ってる子だよね。」と、私を見て確認してきた。
仕方なく、事情を話すことにした。
「親戚の子で、家出したらしいんですが、明日の朝に付き添って家に帰すつもりなんで。僕の家の場所もわからないので、仕方なくここで待たせてるんです。」
「そうか。でも、この時間に未成年はいけないから、裏の控室で待っててもらった方がいいね。」
店長が気を使ってくれてた。
「ありがとうございます。」
と、お礼を言いながら、最初から事情を説明しておけばよかったと後悔した。
加代を裏の控室に連れて行くと、私の未成年の従妹が来ていることがすぐに店のスタッフに広まった。
加代が大きなバッグを持っていたことが、家出という嘘を信じさせる要因となったようだった。
店長が夕食にパスタを出してくれた。店長には感謝だ。
仕事が終わって控室に戻ると、加代はテーブルにうつ伏せになって眠っていた。
彼女の背中には、気がついたスタッフがコートを掛けてくれていたようで、私は制服を着替え、彼女を優しく起こした。




