第六章 葛藤(5)
を覚まし、出勤の準備を始めた。
シャワーを浴びて出ると、留守番電話にメッセージが残っていることに気が付いた。
再生すると、
「・・・。もしもし。もしもし。・・・。ツー、ツー、ツー。」
加代の声だった。シャワーの最中に電話があったらしい。
睡眠の邪魔になるからと、着信音を小さく設定したため気が付かなかったのだ。
また、電話があるかもと、着信の音量を大きく設定し直した。
支度を終え、家で出て鍵を閉めていると、部屋の中なら小さく電話の鳴る音が聞こえた。慌てて、部屋に戻った。
電話はすでに自動着信し、不在のメッセージが流れていた。ピーとなって、録音が開始した。
「・・・。もしもし・・・。・・・。」
加代の声だ。急いで受話器を取った。
「もしもし、もしもし。」
「あっ。」
私が出たことで慌てているのだろう。
「加代?加代ちゃんだよね。」
「はい。加代です。」
私は、息を整え、静かに話しかけた。
「久しぶり。」
「はい。・・・。」
元気のない加代の声。
「久しぶりだね。どうしてたの?元気だった?突然、辞めちゃったから心配していたんだ。今は何をしているの?」
矢継ぎ早にいろいろ質問してしまったせいか回答はない。
「どこに住んでいるの?いま、どこ?」
「新宿です。いま、新宿です。」
やっと返答があった。
「僕、これから仕事で新宿に行くけど、もし、時間があるなら会えるかな。」
「・・・。」
少し間が合って、「はい。」と返事があった。
以前、西新宿の公園で待ち合わせをした。そこなら加代も判るだろうと思った。
待ち合わせの公園に行くと、そこに加代はいた。
「久しぶりだね。」
「はい。」
私の顔を見て安心したのか、電話で聞いたよりは元気そうな返事だった。
「元気だった?」
いろいろ聞きたいことはあったが、何を聞いていいか判らないまま、加代を見ていると、
「今日、泊まっていいですか?」
と、加代が言った。




