第六章 葛藤(4)
慣れない夜の仕事。忙しい日々と生活時間帯の違いで、理恵との距離が広がっていた気がする。
仕事を終えて部屋に戻ると、理恵はちょうど起きる時間で、疲れて眠りたいのに、ドライヤーの音や活動音で眠れない。彼女が家を出てからようやく眠れるが、次は外の騒音でまた目が覚めてしまう。
こうしたすれ違いの生活が続き、次第にお互いの時間が合わなくなっていた。
クリスマスが過ぎると、店も忙しさが増し、すれ違いのまま理恵が金沢の実家に帰省した。理恵は1月10日まで戻らないと言う。
未だバーカウンターの洗い場の私は、経営者の卵たちと競争心を持って働く毎日で、部屋に帰ると疲れ果てて眠りに落ちるばかりだった。年末の新宿の街は朝まで賑やかで、疲れを取る間がなかったが、理恵の帰省は私にとって逆に助けとなった。
ある日、眠りから覚めると、仕事に出る準備をしながら、留守電にメッセージが残っていることに気づいた。深夜に働く私にかかってくる電話は、ほとんどが勧誘か実家からのものだろうと放置していた。この日も、そのまま家を出てしまった。
仕事が終わり部屋に戻ると、ようやく留守番電話のメッセージを再生する時間ができた。再生ボタンを押すと、小さく女性の声が聞こえた。しかし、メッセージは途中で途切れていた。
二件目のメッセージが続く。
「・・・。もしもし。・・・。加代です。 ・・・。ツー、ツー、ツー。」
それ以上のメッセージは残っていなかった。加代の声を聞いたのは半年ぶりで、その後どうしたのか気になった。どうして連絡があったのか、彼女が何を伝えたかったのか知りたかったが、私からは連絡手段がない。
どうすることもできず、私はそのまま布団に入った。




