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雲外蒼天  作者: kazoo
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第六章 葛藤(3)

翌週から新しい職場での勤務が始まった。出勤が午後4時で、翌朝5時までが仕事だ。休みは週に1日だけだが、半年後から有給休暇がもらえるという。独立心の強い若手社員が多く、私が年齢的に一番年上だった。


このバーでは、経験や能力に応じて業務が分かれており、最初はキッチンの洗い場兼雑用係からスタートする。そこから、バーカウンターの洗い場、フードウェイター、ドリンクウェイターと進んでいき、最終的にはカウンターに立ってバーテンダーとして働くことになる。ただし、バーテンダーとしてカウンターに立つには、10種類のカクテルをレシピを見ずに作り、社長や先輩の試飲で合格を得なければならない。当然、未経験の私は、キッチンの洗い場からだ。


先輩社員に自己紹介し、店内の掃除やキッチンの洗い物などをこなしながら、空いた時間にはカクテルブックを読んで勉強する日々が続いた。店は午後5時にオープンするが、メインはバー営業であるため、客足が本格的に増えるのは夜の8時ごろからだ。そのため、それまでの時間は比較的余裕があったが、自分より10歳近く年下の先輩から指示されることには少し憤りを感じた。


入社から1週間でキッチンの洗い場係を卒業することになった。これは私の能力が評価されたというより、二十歳の新しい後輩が入社したためである。

新たに昇格したバーカウンターの洗い場では、バーテンダーのユニフォームを着ることになる。スラックスにワイシャツ、ネクタイ、ベストといった服装で、私も一人前のバーテンダーに見える。


社長は非常に高い仕事意識を持ち、妥協を許さない厳しさを持ちながらも、接客においては柔らかさと安心感を提供していた。特に印象的だったのは、

「バーカウンターは舞台であり、バーテンダーは役者だ。お客様はその舞台の雰囲気に酔い、役者の演技を楽しみに来ている」

という言葉だ。彼の指導を間近で見て学ぶ機会は、私にとって貴重な経験だった。


また、このバーでは歩合制が採用されており、担当席の売上に応じて報酬が変わる仕組みになっている。人気のあるバーテンダーには女性客が多くつくが、実際には売上が人気と反比例することがある。バーテンダー目当ての女性客は数杯のカクテルで長居するが、女性客のつかないバーテンダーには、カップルが座る。見栄を張りたい男性が、高い飲み物を頼むので、売上があるらしいのだ。


私が想像していたバーテンダーの仕事とは大きく異なり、深夜勤務であることを除けば、昼間の会社勤め以上に経営を学ぶ機会が多いことに驚いた。

社長の信念や指導に感化され、私はこの仕事に夢中になっていった。


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