第一章 再会(3)
この日は、絵美が選んだ有楽町の店で待ち合わせをした。
私は、先に来ていた絵美のいるテーブルの席に座りながら、「今日はどうしたの。」と声を掛けた。
「総務部の会議があって、各支店から一人ずつ集まっていました。」
「そうなんだ。帰るのは明日?」
「いえ、今晩の新幹線なんですが、少し相談があって……。」
絵美の少し真面目な雰囲気に緊張した。
昼食の時間が取れず、軽く済ませただけで空腹だったので、「とりあえず、何か食べようか。」と、会話を濁した。
小鍋で熱したオリーブオイルで作ったソースにスティック野菜をつけて食べるその料理は、バーニャカウダと言うらしい。私には食べ慣れぬ料理だった。オーガニックだと言うその野菜は、長野の実家で食べていた野菜のように、濃い味がした。野菜の味を感じたくて思わず、ソースを付けずにニンジンのスティックを食べると、ほのかな甘さが口に広がった。無意識に自分の頬を涙が伝うのを感じた。なぜ涙が出たのか自分ではわからなかった。
涙を流してダイコンを食べる私を見て、「じゃあ、私も苦手だったセロリを……。」と、私を真似て、そのままセロリを食べるが、まさに苦いものを食べた顔を浮かべた。
「大人になって食べられるようになったけど、やっぱりそのまま食べるのはダメね。」
そう笑いながら、グラスのワインを飲み干した。
酒を飲み、食事をしながら会社の話をして、いつもの絵美の元気さに会話が盛り上がっていたが、私は本題の「相談」が気になっていたが、私の一昨日の失敗談が絵美の食指に響いたらしい。
どこか茫然たる私は、人に迷惑を掛けるような失敗こそ少ないが、些細なミスを繰り返す。書類を忘れて会社に戻り、その後、定期入れを忘れて再び会社に戻り、その後、パソコンを持っていなかったことで会社に戻ったことを話した。涙をこぼしながら笑う絵美を責めることが出来ない。
絵美の笑い声に包まれ、空腹も満たされ少し酔った頃合いで、少しの間があって絵美が何気に話を切り出した。
「私、不倫だったんです。」




