第五章 少女(5)
翌朝、目を覚ますと、すでに加代は起きていた。時計を見ると、十時前だった。
テーブルの上には、コンビニで買っておいたパンがきれいに並べられ、加代は台所でお湯を沸かしていた。
「おはよう。先輩から連絡はあった?」
「いえ、無いです。さっき、もう一回メッセージを送りました。」
加代は深刻そうな素振りを見せず、自然に振る舞っている。
「コーヒーでいいですか?」と聞かれ、「うん。」と、当たり前のように答えてしまった。
気がつけば、少し加代のペースに引き込まれているような気がした。
この日。私は休みだった。
私は買い物に出かける予定で、昼前には家を出ようと思っていた。もし加代が出勤まで部屋にいるなら、鍵を集合ポストに入れておいてもらえればいいと伝えたが、加代は「自分も買い物したいから、一緒に出ます」と言った。
私は服を買う予定だった。買い物をするなら池袋が性に合っていたので、いつも利用する駅より少し遠いが、池袋まで一本で行ける路線の駅まで歩くつもりだった。
「加代ちゃん。買い物は新宿?」
「あっ。はい。」
「新宿なら、この道をまっすぐ行けば駅があるから。僕は、池袋に行くから、こっちなんだ。」と、加代の向かう逆の道を指差した。
正直に言うと、加代がまだ高校生くらいの年齢だとわかる以上、あまり一緒に出かけるのは社会的に良くないのではないかと思い、ここで見送ろうと思っていた。
ところが、加代は「じゃあ、私も池袋で買い物します。」と、はっきりと強く宣言した。その一言で、私は断ることができず、加代の勢いに負けてしまった。そして、心の奥では、彼女が一緒に来ることが少し嬉しいと認めざるを得なかった。
池袋に向かう電車の中で、加代に何を買う予定なのか尋ねると、彼女は特に決めているものはなく、店を見て回るだけだと言った。私が秋物の上着とジーンズを買うつもりだと話すと、「それ、付き合います」と加代が言ってくれた。私は洋服のセンスに自信がないので、女性の目で見立ててもらえることが心強く、それに甘えることにした。




