第五章 少女(3)
「先輩に連絡ついた?」
私は加代に聞いた。
加代はポケベルを見つめながら、小さく首を振った。
「まだ、みたいです。」
しばらくの沈黙が流れた後、加代がぽつりと話し始めた。
「いつまでも先輩の部屋にいるのは迷惑になるから、早くお金を貯めたいと思っています。お金貯めるために、歌舞伎町のお店で働くのはどう思いますか?」
突然の質問に、私は少し身構えた。
「それは、スナックとかクラブとかの水商売ってことだよね。」
「・・・。はい・・・。」
「加代ちゃん、まだ未成年だし、それはよくない。僕は、そういう仕事がどんな感じか判らないけど、一度始めると昼間の仕事に戻れないって聞くよ。」
言葉に力が入ってしまったが、それでも伝えなければならないと思った。
「夜の仕事も立派な仕事だと思うけど、まだ、いろんなチャンスがあるのに、早く稼げる道を選ぶのは、ちょっと違うと思う。」
私は自分の立場を棚に上げていることに少し罪悪感を覚えながらも、加代の将来を考えて言葉を続けた。
加代は少し俯き、何も言わなかった。
「加代ちゃん、早く一人暮らしをしたい気持ちはわかるけど、今、安易な道を選ぶと、それが癖になってしまうよ。他の方法も考えてみようよ。僕も協力するから。」
私の言葉に、加代はしばらく黙っていたが、やがて静かに頷いた。
その時、近くの線路で電車が走る音が響いた。
時計を見ると、もう十二時半を過ぎている。
「今の電車、最終だったかな。」
私が言うと、加代は再び黙り込んだ。
「先輩から連絡があるまで、僕の家で待っていようか。」
言葉を選びながら提案すると、加代は戸惑いながらも、小さく「はい・・・」と答えた。




