第四章 嫉妬(4)
翌日、店に出勤すると、この日も加代は休みを取っていた。
彼女が来ないことが気になったが、頻繁にアルバイトが辞めるこの店で、特定のアルバイトの休みを気にするのはそぐわないと思い、誰かに聞くこともためらわれた。
「今日はなんだか忙しいね。」 他の店員に話しかけると、加代ちゃんが休みだからですね。」と期待通りの答えが返ってきた。
「どうしたんだろうね。」 私は惚けたふりをして続けて聞いた。
「昨日は来てたんですけど・・・。」
「じゃあ、やっぱり体調が悪いんだね。」
辞めたわけではないと確認できて、少し安心した。
翌日の水曜日も加代は休みだった。ほぼ毎日一緒に仕事をしていたからこそ、目が合うたびにお互いに好意を感じさせる笑顔を交わしていた。その彼女がいないことに、思った以上に寂しさを感じた。
この日、専門学生のアルバイトが急に来なくなった。
アルバイトという責任の薄い仕事だからなのか、新宿という土地柄もあるのか、学生たちは仕事を続ける意識が希薄なのだろう。だが、自分が抱えている苛立ちは、若者たちの態度に対するものではなく、忙しくなった仕事に対するものだ。水曜日のはずが、一人欠員が出たせいで、店は予想外に忙しい。それでも、自分の中にある怒りの根源は、来なくなった学生ではなく、加代への嫉妬心だと自覚していた。しかし、その感情を認めたくなかった。
「加代は今日も休みですね。」
加代の後輩バイトが、珍しく話しかけてきた。彼が「加代」と呼び捨てにしていることに驚いた。先日までは「加代ちゃん」と呼んでいたはずなのに。彼が意図的にそう呼んでいるのか、それとも加代がそう呼ばせているのか、気にかかることが多かった。すべてをネガティブに捉えてしまう自分自身に嫌気がさした。
「そうみたいだね。」平然と答えたが、心は乱れていた。
自分は高校生たちの若い恋愛を温かい目で見守るべきだ。そう自分に言い聞かせると、少し気持ちが楽になった。
「この前、加代と行った店、シチューが美味しかったんですよ。」
話を聞くたびに、彼が加代のことを好きなのだろうと感じた。それを受け入れると、彼らの話が微笑ましく思えた。
「どの辺のお店?今度、行ってみようかな。」と、余裕を持って話すことができた。
「そういえば、地元の彼とは別れたって言ってました。」
「そうなんだ。」
表情を装って受け流したが、彼にもその話をしたのかと、心の中で小さな波が立った。
夜の22時を過ぎると、忙しかった店も徐々に落ち着いてきた。
このアルバイトを続けるつもりは最初からなかったが、そろそろ次の仕事を考える時期かもしれない。自分はこれから何をしたいのだろう。この年齢で新しい業種に挑戦するのは難しいかもしれないが、再びシステムの営業職に戻る気もなかった。自分には何ができるのか、何がしたいのか。ひとまずはそろそろ転職活動を始めると決意をした。
帰りがけに駅近くのコンビニに寄った。
そこで、加代に出会った。 加代は私を見つけると、驚いたように近寄ってきた。思いがけない再会に、心が跳ねた。
「久しぶり。どうしたの?」
「今晩、泊まっていいですか?」
「えっ。」




