第三章 歓迎会(7)
翌朝、私はテレビの音で目を覚ました。時計を見ると、まだ九時半を過ぎたばかりだった。加代はすでに起きており、テレビの前で静かに座っていた。昨夜の出来事が現実だったのか、少しぼんやりした頭で思い返しながら、私は「おはよう」と声をかけた。
加代は少し照れくさそうに「おはようございます」と返した。なんとなく気まずい空気が流れていたが、それもこの静かな朝の穏やかな雰囲気に溶け込んでいた。
「もう九時だね。一度、帰るよね。」私は普段と変わらない調子で尋ねた。
「はい。家で準備して店に行きます。」
「駅までわかる?」
「酔っていたので、ちょっと自信ないです。」加代は少し笑って答えた。
「じゃあ、駅まで送るよ。」私は立ち上がり、部屋の片付けをし始めた。加代も、少しずつ支度を始め、二人で静かに部屋を出た。
駅までの道を歩いていると、私の空腹に気がついた。朝の爽やかな空気が、昨夜の疲れを少しずつ癒してくれているようだった。加代の方を見ると、彼女もどこかしら落ち着かない様子で歩いていた。
「お腹空いていない?」私は自然に尋ねた。
「そうですね。少し・・・。」加代は少し控えめに答えた。
「駅前のファミレスで何か食べようか。おごるよ。」
「いいんですか?」加代の顔に一瞬、嬉しそうな表情が浮かんだ。
二人で駅前のファミレスに入った。モーニングとランチの間の時間帯で、店内は静かだった。席に着くと、軽食を注文し、穏やかな朝の空気が広がった。しかし、どこかしら気まずさが漂い、会話は途切れがちだった。
加代がトイレに立った後、再び席に戻ると、「飲み物、持ってきましょうか?」と声をかけてきた。
「ありがとう。じゃあ、コーヒーを。」私は、少し大人ぶってコーヒーを頼んだ。加代はオレンジジュースを選び、二人で無言のまま飲み物をすすった。
その静けさの中、加代が口を開いた。「実は。」
私の心臓が一瞬、止まるような感覚に襲われた。
「私、彼に暴力を受けていたんです。」




