第三章 歓迎会(6)
私は、加代のために着られそうな比較的きれいなTシャツとトレーナーのズボンをクローゼットから取り出し、手渡した。加代は、少しホッとした表情を見せ、すぐに玄関口へと向かい、着替えを始めた。彼女が部屋に戻ってくるタイミングに合わせるように、私は玄関の棚から寝袋を取り出し、床に広げた。
「ベッド、使っていいよ。シーツは今朝洗濯したばかりだから、たぶん臭くないと思うし」と、軽く冗談めかして声を掛けると、加代は少し戸惑った様子で「いいんですか?」と聞いてきた。それでも彼女は、おずおずと私のベッドに入った。
私は寝袋に入り、大きな溜息をついた。「ご迷惑を掛けてすいません」と加代が申し訳なさそうに言ったが、私はその言葉を聞きながら、返答する間もなく、すぐに眠りに落ちた。この日は夕方からのシフトだったが、昼間から洗濯や掃除をしていたため、疲れが溜まっていた。そのおかげで、あっという間に深い眠りに入ることができた。
翌朝、寝袋の中で寝心地の悪さを感じながら目を覚ますと、すぐ近くのベッドにいる加代が視界に入った。加代も起きていたようで、私たちの目が合った。ぼんやりとした朝の光が部屋に差し込む中、私は「おはよう」とつぶやくように言った。加代は少し気まずそうに「昨夜はすいませんでした」と、小さな声で返した。
時計に目をやると、まだ朝の七時。私も加代も出勤は午後からなので、時間にはまだ余裕がある。私が「ゆっくり眠れた?」と尋ねると、加代は恥ずかしそうに「はい」と答えた。彼女のボサボサの長い髪が寝ぼけた朝の光の中で、なんだか愛らしく見えた。目がまだ半分閉じたままで、ぼーっとしている様子だ。
私もまだ眠気が残っていたので、加代に「まだ早いから、もう少し寝ようか」と提案し、再び彼女に背中を向けて目を閉じた。何も特別なことが起こらなかったという安心感が、朝の空気に満ちていて、二人とももう一度静かに眠りにつくことができた。




