第二章 出会い(3)
それから加代は私を「大輔さん」と呼ぶようになった。さすがに仕事中は禁止したが、それ以外の時は特例として許可した。ある日、なぜ私を下の名前で呼ぶのか尋ねてみたところ、加代は「大輔さんの後ろ姿が父親にそっくりなんです」と答えた。確かに、初めて私を呼ぶ際、「おと…」と口走っていたような記憶がある。仕事が終わってタイムカードで私の名前を確認し、「お父さん」と呼ばないために、必死に「大輔さん」と復唱していた時、偶然私と会ってしまい、思わずその名前で呼んでしまったらしい。さらに、「その時、大輔さんが素敵な笑顔で返事してくれたから、呼んでもいいと思ったんです」と続けた。加代は父親が大好きだったようで、両親が離婚してからは寂しい思いをしていることも話してくれた。彼女が私を父親のように慕ってくれているのは、近しい存在だと感じてくれているのだろう。しかし、恋愛対象から外れているのは少し残念な気もした。
それでも、加代は真面目に仕事に取り組んでいた。遅刻もせず、他の高校生アルバイトが週に数回しか出勤しない中、ほぼ毎日フルタイムで働く加代は、次第に店のスタッフとも打ち解け、調理場のメンバーにも早くから馴染んでいった。最初は大人しく、接客が苦手そうに見えた加代だったが、働くにつれて、彼女の内に秘めた明るさと元気が表に出てきた。いつしか店内でも、加代の笑顔や声が溶け込むようになり、スタッフや常連客にも愛される存在となっていた。そんな加代の姿を見て、私は彼女の成長を頼もしく感じ、指導係として安心することができた。




