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予備校

 19の夏、わたしは浪人中だった。受験したすべての大学に落ちた。きれいに落ちていた。がんばったのに受験に失敗した・・・と周囲の人は思っていたかもしれない。一方でわたしは、ある事柄を当然として受け入れるべきなことに苦悩していた。受験には失敗して当然だった。勉強はしていなかったし、わたしが現役の受験生らしく振舞うのに必要だったのは、上京したいという情熱だけだったからだ。家にいるより、すべての場所がましに思えた。3月最終週に金沢の短大の試験を見つけて飛びついた。証明書類を受け取りに、高校へ行った。車で送ってもらう。道すがら、父は泣いた。わたしは父の方を見なかったが、たぶん泣いていた。思い返すと、この時から母は目に見えてやせてきていた。痛みをごまかす代償だった。わたしは父をいじめているような気がした。父は珍しく母の具体的な病状のことを話した。わたしは泣いていた。何がそんなに嫌なのか、訳が分からなくなるほどに。どうしてわたしが家にいなければならないのか、家事ならもう2年も断続的にやってるし、もううんざり、勉強だってしたくない。何も欲しがっていないのに、わたしから自由がなくなっていく。もうわたし、生きてないのね。生きられないのね。

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