要塞都市ネフィリアム
はい。魔王討伐へと向かったアリシアとアネモネ。
RPGみたく、次の街へと向かいます。
今回は、視点の切り替わりが多くなっております。
ご了承ください。
それではどうぞ。
「ねぇアネモネ、この近くの街って…なにかある?」
勢いで家を出たはいいが、道順がわからない。
《カムダラ王国の近くだから…ネフィリアム…かな。》
「ネフィリアム?」
そんな街は聞いたことがない。
…それもそうか。
1歩たりとも王国から出たことが無い私にとって、目につくものや名前は初めて知るものばかりだ。
《『要塞都市』って言われている街だよ。周りを壁で囲まれていて、他の街と貿易とかしてて、世界でトップクラスの都市なんだ。》
「そうなんだ…なら、道案内よろしく。」
《任せてよ!》
こうやってアネモネと話していてふと思うことがある。
アネモネは、その知識をどこから得たのだろうか。
そして、いつから私の中に居たのだろうか。
《…とりあえず、防具を新調しようか。》
「そうだね。」
私は目の前に見えた防具屋に入っていく。
所持金は4397ユール。
この世界では、ユールは簡単には手に入らない。
1ユール集めるには、『骸骨弓兵』辺りを倒すか、カムダラ王国基準では、1日2,3時間働かないと手に入らない。
無論、もっと細かい、1ユラトもあるにはあるのだが、製造される数は少ない。
だから、この世界の人々は基本的にユールしか使っていないのだ。
私は、その光景も見た瞬間に、嘆声を漏らした。
《さてと…アリシアと私にあった防具を探そうか。》
「うん。」
そして、私は防具選びを始めた。
「はい。合計4360ユールだよ。」
4360ユール…?
私とアネモネの防具を買っただけなのに…
《アリシア…これが、現実だよ…》
「あ、ありがとうございます。」
私は、きっちりお代を払い、店を出た。
「毎度あり〜」
という店員さんの明るい声とは裏腹に、私は店を出たところでガックリと肩を落とした。
《えっと…泊まる所どうする?宿屋もお金かかるけど…》
「何ユール…?」
《な…78ユールぐらい…》
今の所持金…37ユール。
――足りない。
《え…えっと…モンスター倒そうか…》
「うん。でもその前にアネモネも装備しなきゃ。」
《分かった。路地裏に行こうか。》
そう言って私達は路地裏に行く。
そして、防具をアネモネもつける。
そして、私達は草原へと走り出した。
――さっきの路地裏に入ってからの出来事を、一部始終見られていたとは知らずに。
眼の前の敵に向かって、剣を一閃。
そして頭蓋骨が空を舞う。
私は今、『骸骨弓兵』と戦っている。
人の形をしており、人から肉と内蔵を抜いたら恐らくこうなるだろう。
その骨の体に青いローブを纏っており、遠隔攻撃を仕掛けてくるという厄介なモンスターである。
私達は、スケルトンの放つ矢を剣一本で切り、そのまま肉薄し、首を撥ねる。
ということを交代交代でやっていた。
そのおかげで私もアネモネもlv.10になった。
「…ねえ、アネモネ。貴女が使ってる剣、もうそろそろ寿命なんじゃない?」
《あー…確かに…》
『魂部屋』から見たのだが、アネモネの、『マインドネトラヴ』は、刀身がボロボロになっていた。
そろそろ変えどきなのだ。
《でも、人に頼むにしても自分で素材を持ってこないとだから…》
「この近くに洞窟は…なさそうだね。」
《結局これで頑張るしか無いのか…》
と、アネモネは心底残念そうな声を出した。
「…凄い。」
その一言に尽きる。
度々金髪と青髪に容姿を変えながら、次々とスケルトンを倒していく。
しかし、本当に凄いのは、その倒し方なのだ。
普通、スケルトンが打つ矢を避けながら、遠距離で倒すものなのだが、あの子は、矢を剣で弾いて、肉薄して倒している。
まぁ、度々魔法はつかっているのだが。
常人には出来ない技量…あれは。
「…うちの連合に誘う余地、大ありね…」
と、私は一人納得して、尾行を続けるのだった。
「んー…これからどうする?」
私達はスケルトンを倒し、なんとか宿代の78ユールまで届いた。
そして、今ネフィリアムにもどってきたところだ。
《ん…魔法の修練?》
「魔法の修練か…」
正直したい気持ちはある。
さっきのスケルトン戦で、魔法の効きが悪かったような気がした。
《んー…魔法連合に聞きに行くしか…》
「魔法ギルド?魔法ギルドって…「もしや、魔法ギルドをお探しですか?」え、きゃあ!?」
すぐ目の前から声が聞こえ、驚いて飛び退ってしまった。
しかし、人影は見当たらない。
《え?どこなんだろう…》
「ここですよ。ここ。下に居ますよ。」
という声につられ、下を向く。
そこに居たのは、茶色の髪に水色の目を持った背の小さい幼女だった。
「えーと…君は…?」
「あぁ。私は魔法ギルド、『魔升のアキドネ』のメンバー、『リリー・ファレイツ』です。」
「リリー…ね。私は、『アリシア・ローレット』よ。」
リリーと言う名の子がいう。
「アリシアさん…ですね。それと、もうひとりの人はなんですか?」
と。
焦った。
相当焦った。
何でこの子は知っているのだろう。
誰にも言ってないし、町中では変わってすら無いはずだ。
変わったとしても路地裏だが…
「どうしたんですか?」
「…い、いや。なんでもない。」
(ど、どうしようアネモネぇ〜)
《うーん…なら、先にこの子のギルドに行こうか。そこで交代しよう。》
(うん。)
「また後で紹介するから、今は貴女のギルドに連れてってくれるかな。」
「はい!分かりました!」
〜少女×幼女移動中〜
「ここが『魔升のアキドナ』の連合拠点、エリドレットです。」
「エリドレット…」
リリーの案内で目の前に見えてきたそれは、茶色の壁に黒の屋根を乗せた、少し大きい一軒家だった。
私がドキドキしながら扉をくぐると。
「おかえり。リリー。」
眼の前からスキンヘッドの巨漢が歩いてきた。
「あら。その子は?」
…オカマか。
男性なのだろうが女口調らしい。
「オレジさん!新たなギルド加入者ですよ!」
「へぇ。貴女達、魔法に興味あるのね。」
オレジさん…?この人はオレジと言うのだろうか。
「あぁ。自己紹介、してなかったわね。私はオレジ。『オレジ・ペパーストン』よ。」
「オレジさん…ですね。私は、『アリシア・ローレット』です。そして」
私達は、互いに入れ替わる。
「『アネモネ・ローレット』です。以後お見知り置きを。」
ギルド。ある一定の値を強化したい者たちが集まり、同盟を組むこと。
「アリシアちゃんにアネモネちゃんね。よし。とりあえず、貴女達の実力が知りたいから、こっちに来てくれる?」
と、言われついたのは、
「…なにここ。闘技場?」
私は、この広い空間に絶句した。
私でなのだ。アリシアは…
《すごい…凄い凄い!広い!》
あぁ。こんな性格だったか。
「さて。じゃぁ…いつでもかかってらっしゃい?」
「《…え?》」
はい。ギルドに入るための『検定』が始まりました。
この世界ではギルドに入るために、ギルドマスターと手合わせをしないといけません。
それが『検定』です。
アリシアたちは、『検定』を超えられるのか…!?
それではばいなら!