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偽りに塗れたこの世界で。  作者: 朱羽の索夜
偽りの言葉
3/7

災禍の始まり

アリシアさんのお家が大変なことに…なってそうです。

このピンチをどうやって切り抜けるのか。

それではどうぞ

私は、走った。走って走って、走り続けた。

自分の家がある方向に。

今もなお燃え盛る、炎がある方へ。

あと、どれぐらいなのだろう。

と、そんな事を考えながら走っていると、前に赤い光が見えた。

《もうちょっとだよ、アリシア!》

と、アネモネの声が聞こえてくる。

私は、そのアネモネの声に後押しされるようにして、加速した。

私の目に飛び込んできたのは、

――パチパチと音を立てて燃える、カムダラ王国だった。

「…何が起こってるの?」

《わからない。でも、誰かが大規模な魔法が使ったんだと思う。》

魔法?炎系下級魔法の『火炎(フレア)』でもこの威力はだせないのだ…

…この現状は、『火炎(フレア)』と似ても似つかないものなのだ。

…果たしてこれほどの威力を、魔法で出すことが出来るのか?

そんな事を考えつつ、私は自分の家に向かうのだった。










――自分の家は、酷い有様だった。

屋根は潰れ、そこかしこから火の手が上がっている。

そして、その家の前に、

「お母様っ!お父様っ!お兄様っ!」

倒れた家族がいた。

「アリ…シア?」

と、お兄様が反応した。

「お兄様ぁー!」

私はお兄様に向かって速度を上げた。

「アリシアー!来るんじゃない!」

というお兄様の声と、

《アリシア、止まって!》

というアネモネの声が聞こえたのは、ほぼ同時だった。

そして、私に黒い影が被さった。

と、そのことを知覚した瞬間、私はその場から飛び退いた。

『ズガァン』

と、音を立てて落下してきたのは。

《なっ!?オーク…の突然変異体!?》

ありえないほどの巨体を持った、オークだった。

半人豚(オーク)…半分人間、半分豚の魔物だ。

身長は1.7メルト(メートル)ほどで、ナイフを用いて近接戦を用いてくる…はずなのだが。

「で…でかすぎるでしょ…」

どう見ても5メルトはある。そして、持っている武器は片手直剣。

《魔物は『突然変異』と言って、体の何処かが急成長する稀な個体もいるんだ。ただあれは…》

と、アネモネが説明しだす。

途端、アネモネが、背筋を凍らせるような事を言った。

《ただあれは、体のすべてが…変異してる。いわば、完全変異体。そんなところ。》

完全…変異体。

《アリシア、今は、とにかく逃げ…》

「…無理だよ。アネモネ。お母様達が…襲われちゃう。」

《…たしかにそうだけど…》

と、アネモネは心配そうな声をする。

「大丈夫。アネモネに今まで…と言っても少しだけど、教えてもらったことを発揮するから。見てて。師匠。」

《…分かった。死なないでね。》

「うん。」

と。私はアネモネに約束をし、オークに突っ込んでいった。








『カキィン』

と、剣戟の音が周りに木霊する。

私は、オークの攻撃をかいくぐり、時折攻撃を仕掛ける。

しかし、いつもこうして跳ね返されてしまう。

「くっ…」

オークの剣が横一文字に振られた。

私は避けきれないと判断し、剣を受け止めた。

だが

「なっ!?」

重い。同じ片手直剣のはずなのに。

これは優先度(レアリティ)の差なのか、それとも、筋力の差だろうか。

まぁ、どっちもだろうが。

こっちが、『石製の剣』という優先度(レアリティ)が低いものに対して、オークの剣は、かなりの業物だと見据えることが出来る。

このままじゃ拉致が明かない。そう考えた私は、

剣の軌道をずらし、

「『火炎(フレア)』!」

魔法を放つ。だがしかし、

「グルアァ!」

オークの剣に切り裂かれてしまった。

《なっ…魔法陣破壊(スペルブレイク)!?》

魔法陣破壊(スペルブレイク)…その原理自体は聞いたことがある。

この世界の魔法は、打ち出された中心に魔法陣が有り、それが魔法の核となっているようなのだ。

だから、その魔法陣を破壊してしまえば、魔法自体が消滅する…そういう技術なのだが、

なんせ難しすぎるもんで、使いこなせる者はごまんといない…事によれば一人もいない…

そんな高等テクニックなのだ。

「どうしよう…」

今の私は、すべての攻撃手段を防がれたのだ。

私じゃ、攻撃は…届かない。

オークが剣を振りかぶる。

その途端、オークの剣に、禍々しい光彩が宿った。

『剣技』…剣に不思議な力が宿り、威力を底上げする技…

頭の片隅でそんなことを考えながら、私はオークの剣を待った。





――しかし、剣が落ちてくることはなかった。

不意に、オークの後ろから、別の『剣技』が迫ってきて、その『剣技』がオークの『剣技』に当たったからだった。

そこには…

「お兄様!?」

オークと剣を交えてる、お兄様の姿があった。

「アリシア!家の地下にある剣を使え!お前が戻ってくるまで時間は稼ぐから…早くいけ!」

「分かった!」

私は、溢れ出てきそうな涙を飲み、家の地下へと急いだ。







「あつっ」

家の中は火に包まれていた。

「…ちょっと、火の勢い強すぎない!?進めないんだけど!?」

《あれまぁ…どうしようねぇ…あ、そうだ。『水流(アクア)』。》

とアネモネが言った瞬間、私の前に蒼い魔法陣が出てきて、大量の水の流れが出てきた。

そして、家の中の火が全て消火された。

「ありがとう。アネモネ。」

そして、私は、地下室の床扉の上へ来ると、扉を開け…

ようとしたのだが。

扉は…開かなかった。

「なんでよ!」

相当焦っていた私は、扉を、持っていた剣で叩き壊した。

それと同時に、手に持っていた石製の剣が、儚い音を散らして砕け散った。

どこか感慨深い感情を持ち合わせながら下へ降りていき、地下室へ入る。

その部屋の中心には…

《何?…これ。》

「これは…?」

――多少ホコリを被ってはいるが、優美な形をした美しい片手直剣があった。

《アリシア…これ、かなり優先度(レアリティ)高いよ。――さっきの、オークなんて、話にならないくらい。》

アネモネがそう言うなら、そうなのだろう。

そうして私は、その剣を抜こうとしたのだが…

「なっ…ぬ、抜けない…」

剣は、びくともしなかった。

《そうか…アリシアは、このレベルの剣は持てない…のか。…仕方ない。アリシア。目をつぶって。》

と、アネモネがそういったので、私は素直に目を閉じる。

途端、意識が暗転していった。














































「ふう。これで良いかな。」

辺りに眩い光が迸った後、そこに現れたのは、先程の金髪の少女とはまた違う、青い髪を持った少女だった。

「…また、アリシアに修行をつけなきゃいけないかなぁ…」

私…アネモネ・ローレットは、アリシアが目をつぶったときに浮上してきた。

そうして、今はこの身体…と言っても外見は私だが…の支配権を確立している。

あと数分ほどすれば元のアリシアの身体に戻ってしまうが、数分もあれば十分だ。

その時、

《アネモネ!?何が起こったの!?》

と、『魂部屋』にいるはずのアリシアが声をかけてきた。

「あれ。アリシア。気がつくの早いんだね。」

普通、私…【内側】の人格が出てこれば、【表側】の人格は数分は目覚めない…そうやって聞いたことがあるのだが…

――アリシアは、ちょっと違うようだね。

「今、私がアリシアの身体の支配権を確立…身体を動かせるようになってるんだ。剣を抜くのは…こうしなきゃ、抜けないからね。」

《そ、そう。》

「それと、一時的にアリシアのレベル補正上げとくね。これで多分、アリシアの身体に戻ったときに、この剣が持てるはずだよ。」

レベル補正…筋力や、魔威力といった、ステータスにも載っていない、所謂『隠しパラメータ』のことだ。

筋力は、攻撃力や、速度に直結してくるし、魔威力は…言わなくてもわかるだろう。

そのレベル補正の中で、剣や盾などの、武器を持つことに関係してくるのが、筋力、耐久、そして忍耐だ。

この剣は、全ての数値が、多分468ぐらい無ければ…これはlv.5相当なのだが…持つことができないはずだ。

言ってしまえば、私もこの剣を持つのがギリギリなのだと思う。

「じゃあ、抜くよ。」

《うん。》

『シャラン』

と、その剣は音高く抜き出された。

《う、うっわぁ…》

アリシアは、この剣の美しさに絶句している。

「ん?なんだろう、これ。」

その剣をよく見てみると、剣の刀身に、何やら不思議な模様が刻まれていることに気がついた。

「『オブジェクトステータス・オープン』。」










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


銘 【神々の紋章(ヒエログリフ)

lv.5 lv.upに必要な経験値3453 後3453


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《ヒエロ…グリフ》

「短い…そして、何なの?レベルアップって…」

短すぎる。そして、剣は、基本的にレベルが上がったりはしない…はずなのだ。

試しに自分の剣でやってみる。

「『オブジェクトステータス・オープン』。」







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


銘 【マインドネトラヴ】

lv.3


必要パラメータ

筋力 259

耐久 236

忍耐 195


固有スキル 『魔法憑依』

      ・魔法を纏って攻撃出来る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「やっぱり。ならこれは…どういうこと?」

分からない。何故。

あの剣…【神々の紋章(ヒエログリフ)】には、どういうわけかレベルアップという機能がついている。

「なんで…ううん。今はこんなことをしてる場合じゃない。少しでも剣に慣らしとかなきゃ」

《慣らす?何で?》

と、アリシアが聞いてくる。

その問いに私は剣を素振りしながら答えた。

「それは…ねっ!この身体…と言っても私の身体だけど…をっ!この剣に鳴らさなくちゃ、剣がまともに振れない…でしょっ!」

《そうなのね。》

「まぁ、でも、結局のところ、この感覚は私のものだから、アリシアの感覚に合うかどうかはわからないんだけどね。」

このぐらいでいいだろうか。そう思った途端、体が淡く光り始める。

「アリシア、よく聞いて。この身体がアリシアのに変わったら、すぐに梯子を登って。そして、オークに後ろから斬りかかるんだ。この剣だったら、たとえ剣が構えられても、すぐに粉々に出来るからね。」

《分かった。》

伝えたいことを伝え終わった私は、すぐに、あるものを探し始めた。

そして、それはすぐに見つかった。

私は、地下室の物が散乱している中から、”それ”…これまた優美な形をした鞘を手に取った。

「あった。けど…」

なんと、鞘にも、不思議な模様が描かれていたのである。

「また…まぁ、いいか。」

そうして私は剣…ヒエログリフを鞘にしまい、腰に吊るした。

その瞬間、私の意識は暗闇へと堕ちていった。


























目を開けると、そこは確実に私…アリシア・ローレットの家の地下室だった。

そのことを認知した私は、

次の瞬間、アネモネに言われたように、地下室の梯子目指して駆け出していた。

腰に新たに加わった頼もしい重み…ヒエログリフを吊るし。

「待っててね。お母様。お父様。…お兄様」

はい。アリシアさん。不思議な武器を手に入れました。

これでオークも倒せるはずです。

それではばいなら!

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