表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】妹に婚約者を奪われた伯爵令嬢、実は敵国のスパイだったことに誰も気づかない【書籍化・コミカライズ決定】  作者: 日之影ソラ
後編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/45

34.嘘つきの末路

 全てが順調に進んでいる。

 協力者の出現、ドラゴンの捕獲。

 本来予定になかった出来事を経て、強力な手札が増え。

 私が思い描くゴールに近づいている。

 そろそろもう一歩動かそう。

 

「やぁ、こんにちは」

「ルガルド殿下」


 そう考えていた頃だった。

 宮廷の廊下を歩いていると、目の前に婚約者の彼が現れたのは。

 私は彼の元へ駆け寄る。


「こんにちは! 私に会いに来てくださったのですか?」

「ああ、そうだよ。君を探していたんだ」

「本当ですか? 嬉しいです」


 私は満面の笑みを浮かべる。

 すると彼も笑顔で返してくれた。


「こんな廊下の真ん中で話すのも邪魔になる。別の場所に行かないかい? 僕の部屋とか」

「――はい。ぜひとも」


 私はルガルド殿下に連れられ、彼の部屋へと向かう。

 彼の部屋に来るのも何度目だろう。

 特段緊張も警戒もせず、私は中へ入った。


「さて、よく来てくれたね?」

「え?」


 直後、後頭部に衝撃が走る。

 何かが当たった。

 というより、叩かれたような感じだった。

 私は痛みを感じてふらつき、そのまま意識を失ってしまう。

 消えゆく意識の中で見えたのは、見たことがないほどニヤけたルガルド殿下の顔だった。


  ◆◆◆


 ポツリ、雫が落ちる。

 私の頬に伝った冷たい水の感覚で、沈んでいた意識が浮かび上がる。

 

「ぅ……ここは……」

「ようやくお目覚めかい? 随分とお寝坊さんじゃないか」

「ルガルド殿下?」


 目の前には彼がいた。

 椅子に座っていて、周りは殺風景な灰色の壁と天井。

 王城の中とは違う雰囲気に醸し出す。

 遅れて気づく。

 手足が縛られ、壁に磔にされてしまっていることに。

 ガシャン、と動かそうとして引き留められる。


「こ、これは! 一体どういうことですか?」

「逃げられたら困るからね。拘束させてもらったよ」

「逃げる? どうして私が?」

「そんなの決まっているじゃないか。君の正体が、裏切り者のスパイだって話をしたら、君は一目散に逃げようとするだろう?」

「――!」


 裏切り者のスパイ?

 彼の口から思わぬ単語が飛び出して、思わず驚愕する。


「何を……言って……」

「まだ惚けるのかな? 仮にも僕が、元婚約者に気付かないと思ったかい? アリスティア」

「――え?」


 彼の目には私の姿がアリスティアに見えている。

 そんなはずはないのに。

 だけど彼は、明らかに普段と表情が違う。

 私のことをあざ笑うかのように、ニヤニヤと笑みを浮かべている。


「正直驚いたよ。まさか君に再会できるなんてね? しかもこんな願ってもない形で……」

「どういう……」

「君、意外とうっかりしているんだね? こんなものを持ち歩いているなんて」


 彼の手にはアクセサリーが握られている。

 そのアクセサリーには、大きく家紋が描かれている。

 ミレーヌ家の家紋が。


「外から来た一般人が、これを持っているはずがない。すぐにピンときたよ。そしたらあら不思議、君の姿が見えるようになった。そういう魔法かな?」

「……」

「怖い顔だ。けど諦めたほうがいい。その手錠は魔法の使用を妨害する。いくら君でも、そうなってしまえばただのか弱い女だ」


 ルガルド王子はいやらしい笑みを浮かべる。

 この鎖は魔力の流れを乱し、魔法使用を困難にする。

 そういう特殊な式が仕込まれている魔導具の一種。

 いかに優れた魔法使いでも、この鎖を解除するためには相応の時間がかかる。


「どうせ復讐のために戻って来たんだろう? 残念だったねぇ~ せっかく爵位までもらったのに。けどよかったよ。君が戻ってきてくれて」

「……どういう意味ですか?」

「ちょうどほしかったんだ。僕の言うことを何でも聞く人形が。本当はシスティーナを時間をかけてそうする予定だったけど、君のおかげで必要なくなったよ」


 彼はゲスに笑う。

 この男がシスティーナをどう見ているのか。

 考えなくても見え透いている。


「彼女は顔も身体もいいけど、魔法使いとしては君以下だったみたいだね。僕の相手に集中してもらうために、代わりに働いてくれるコマがほしかったんだ。君にやってもらおう」

「……従うと思っているんですか?」

「従わせるんだよ。今からね」


 複数の足音が響く。

 ぞろぞろと集まってきたのは、上半身裸の屈強な男たちだった。


「いいんですか? 殿下」

「ああ、好きに使ってくれ」

「な、何を……するつもりですか!」

「身体に教え込むんだよ! 君がただの人形だってことを! 心を壊してしまえば、人間なんて簡単に人形になるんだ! 知らなかったかい?」


 男たちが迫る。

 いやらしい視線が集まる。

 寒気がする。


「い、嫌!」

「この方法で何人も屈服させてきたんだ! 君も所詮は女だろう? 耐えられるはずがない。ああ、そのうち飽きたらシスティーナも一緒に壊すのもいいな! 婚約者も女も山ほどいるんだ。一人や二人玩具にしたってお釣りがくる」

「さ、最低! この変態王子!」

「なんとでも言えばいいさ。次に僕と会う時は、泣きながら許しを請うんだね」


 ルガルド王子は私に背を向けて去って行く。

 勝ち誇った顔を最後に、一度も振り向かない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『«引きこもり錬金術師は放っておいてほしい» 妹に婚約者を奪われ研究に専念できると思ったのに、今度はイケメン王子様に見つかって逃げ出せません……』

https://ncode.syosetu.com/n8441io/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ