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【WEB版】妹に婚約者を奪われた伯爵令嬢、実は敵国のスパイだったことに誰も気づかない【書籍化・コミカライズ決定】  作者: 日之影ソラ
後編

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25/45

25.仲間って案外……

 ブラックドラゴンが翼を広げ、私のことを睨みつける。

 よくも眠りを邪魔してくれたと。

 言葉は通じなくとも威圧で伝わる。


「ごめんなさい。これからもっとひどいことをするわ」


 私は背後に複数の魔法陣を展開する。

 放つは炎の球体。

 灼熱の炎を覆った破壊の一撃を、無数に放つ。

 ドラゴンは翼の羽ばたきでそれを弾き飛ばしてしまう。


「今のを軽々と……」

「おうおう! 元気いっぱいじゃねーか!」

「――!」


 突如、ドラゴンの頭上にアレクが大剣を振り上げて現れる。

 私もドラゴンも不意をつかれ、脳天に鋭い一撃が振り下ろされる。

 たかが大男の一撃。

 その一撃によって、ドラゴンは地面にたたきつけられる。


「はっ! どうだごら!」


 ただの怪力じゃない。

 大剣に高度の重力を纏っている。

 加えて、身体能力も底上げしているみたいね。


「やるじゃない。でも、その程度じゃまだよ」

「あん?」

「来るわ」


 ドラゴンは再び急上昇する。

 翼による突風を、しっぽの振りまわしで私たちを襲う。

 私は急いで回避するけど、アレクは避ける気がない。


「エイミー!」

「わかってる!」


 二人の位置が入れ替わる。

 アレクではなくエイミーが空へ転移し、ドラゴンの尾が迫る。

 彼女は自身の周囲を透明な結界で覆った。

 ドラゴンの尾が結界に当たった瞬間、その勢いを反転させて弾かれる。

 物理攻撃を反射する結界『リフレクション』。

 二人の華麗な連携によって体勢を崩したドラゴンに、エイミーとアレクが再び入れ替わり、今度はアレクが大剣で攻撃する。

 攻撃をアレクが、防御をエイミーが担当することで、火力と防御力の両立ができている。

 二人いればこういう戦い方もあるのかと、参考になった。

 ただ、私には縁のない戦い方な気がしている。


「おらどうした! こんなもんかよトカゲ野郎!」


 煽るアレクにドラゴンは尻尾で攻撃を仕掛ける。

 続けて体当たり。

 二人の連携に翻弄されている。

 しかし、ダメージの蓄積が甘い。


「こいつ全然元気だぞ」

「ほとんど効いてないの?」


 想定以上にドラゴンの鱗は硬いらしい。

 でも、ダメージはある。

 特に最初の一撃は確実に効いていた。

 せめてあと一発くらい、でかい魔法を当てられたら動きを止められる。

 その隙がない。


「こんなんじゃこっちの魔力が先に尽きちまうぞ!」

「何か手を……アリスさん! さっきの攻撃をもう一度撃てませんか?」

「わかったわ。でも数秒の溜がいるの。その間を任せていいかしら?」

「おうよ! 任せな!」

「私たちで引き付けます!」


 二人にドラゴンの相手を任せ、私は後退する。

 大技を放つために。


「……ふっ」


 笑ってしまう。

 最初は一人で何とかする気でいたけど、なんだかんだ頼っている。

 二人の戦いを見て安心したから。

 任せても大丈夫だと。

 そう思える心が、自分の中に残っていたことに驚いた。

 私はまだ、レオル君以外の他人を頼ることができるらしい。


「悪くない気分ね」


 他人を頼るのも。

 私は魔法陣を複数展開する。

 一撃目は三つを重ねた。

 今度は更なる威力向上を目的に、五つの魔法陣を重ねる。

 コントロールが難しいから時間がかかるけど、二人に任せれば大丈夫。

 しかし、ここで予想外のことが起こる。

 私が魔法陣を展開した途端、ドラゴンは二人を無視して私のほうへと視線を向けた。


「――!」


 以前に調べた文献を思い出す。

 ドラゴンは人間に近い知能を持ち合わせている、と。

 私が何を企んでいるのかを悟ったか。

 だけどこの距離なら届かない。

 そう思っていた矢先、ドラゴンは顎を開けてエネルギーを収束させる。


「おいおいこれ!」

「ドラゴンブレス……アリスさん一旦退避を!」


 そうしたいけど、魔法の準備ができる直前だ。

 ここで止めると魔力を大幅に失う。

 せめてこの攻撃を放って、同じタイミングでぶつけることができれば……。


「ギリギリ間に合わないわね」

「――任せろ!」

 

 地面から聞こえる声。

 レオル君がいる。

 魔法使いではない彼が、その眼を見開きドラゴンを睨む。

 

 魔眼。

 

 瞳に宿った特殊な魔力と式により、様々な能力を保有する瞳のことを指す。

 先天性がほとんどで、多くは制御が効かず曰く付きとなる。

 現代では一種の魔法的な病とされている。

 私も症例として資料で見た程度だ。

 まさか――


「レオル君が魔眼を」


 その瞳でドラゴンを見ていた。

 直後、ドラゴンの口元で集まっていたエネルギーが爆散する。

 まるで制御を失ったように。

 ドラゴンブレスの失敗により大きな隙が生まれた。


「今だアリス! 叩き込んでやれ!」

「――ええ、ありがとう」


 よくわからないけど、お陰で全力の魔法を放てる。

 最初の三倍は覚悟しなさい。

 今度こそ空から地面に叩き落して、飛べないくらい弱らせる。


「降りなさい!」


 光の雨が降る。

 特大の光はドラゴンを包み込み、地面をえぐっていく。

 いかに硬い鱗でも、その衝撃を完全に打ち消すことはできない。

 光の雨と地面との激突により、その衝撃は全身へ伝わった。

 今ならできる。

 私が考案した魔物を調伏する式を!


「私たちのものになりなさい」


 地面に寝そべるドラゴンを魔法陣で包み込み、淡い光が漂う。

 光の粒子はドラゴンの中に入っていき、睨んでいた瞳が柔らかくなり、緩やかに眠っていく。

 これで私の魔力とドラゴンの身体がつながった。

 アレクとエイミーが近づいてくる。


「大人しくなりましたね」

「できたのか?」

「ええ、お陰で調伏は成功したわ。ありがとう」


 私は二人にお礼を言う。

 一人で挑むよりも、ずっと戦いやすかったし安心できた。

 同僚なんて興味なかったけど、こういうのは悪くない。

 レオル君も……。


「お疲れ様だ。みんな」

「レオル君もね」


 聞きたいことはあるけど、今は酔いしれよう。

 伝説のドラゴンを手に入れた達成感に。

 これから引き起こす物語に。

 大きな手駒が一つ増えた。

 ドラゴンの力を借りて、本格的に奪い返しに行くとしよう。 

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