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【WEB版】妹に婚約者を奪われた伯爵令嬢、実は敵国のスパイだったことに誰も気づかない【書籍化・コミカライズ決定】  作者: 日之影ソラ
前編

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10.自業自得

 アリスティアが追放された宮廷、その一室では悲鳴があがっていた。


「……終わらない」


 山積みになった書類を睨むのは、彼女の後任となったシスティーナ。

 アリスティアが残していった通常業務に押しつぶされ、毎日のように遅くまで働いていた。

 あまりの忙しさに、婚約者と会う時間すらない。

 それと合わせる様に、ルガルド王子も忙しくなってしまった。

 結果、彼女は一人で仕事に励む。

 弱音を吐きたくとも許されない。

 なぜなら彼女は、多く期待を背負っている。


 トントントン。


 ノックの音に続いて、女性の声が響く。


「システィーナさん、入りますよ」

「はい」


 声で誰かはすぐにわかる。

 宮廷魔法使いを束ねる室長だった。

 彼女は身分や世情に流されず、対等に接する。

 仕事の分配も、各人の裁量に合わせた適切な量を任せていた。

 が、システィーナの場合は少々変わっている。

 なぜなら彼女は、アリスティアの後任として特別に選ばれた。

 それ故に、与えられる仕事量も、期待も、全てアリスティアと同じ基準である。


「どうされましたか? 見ての通り私は仕事中ですが」

「そんなことはわかっています。システィーナさん、発魔所の設備の調子が悪いようです。どうにも生成される魔力量が規定より三割ほど減少しているとか」

「は、はぁ……それがどうしたのですか?」

「わかりませんか? あなたに修繕の依頼を頼んでいるのです」


 室長はキッパリと冷たく命令する。

 当然、システィーナは驚き否定する。


「待ってください! どうして私なんですか? 私は今――」

「発魔所の管理もアリスティアさんが担当していました。よって後任であるあなたの仕事です。大至急、発魔所に向かってください。わかりましたか?」

「――っ、はい」


 いかにシスティーナでも、宮廷での立場は室長のほうが上。

 その命令には従うしかない。

 頼りの王子様は、今どこにいるのかもわからない。


「なんで……」


 彼女は唇を噛み締め、怒りを原動力に動き出す。

 

 発魔所にたどり着くと、彼女は早々に刻まれた魔法式を確認した。

 動作も正常で、特に問題は見当たらない。


「修繕箇所なんてどこにもないじゃない……」


 ただ、明らかに魔力の供給量は規定を下回っていた。

 これで不具合を見つけられない……なんてマヌケを晒せば、周囲の期待を裏切ることになる。

 それだけはあってはならないと、彼女は必死に探した。

 一度研究室に戻り、アリスティアが残した資料も探し回る。

 そして見つけた。


「あった!」


 発魔所に関する資料。

 あそこで使われる魔法式を作ったのはアリスティアだ。

 システィーナも当然知っている。

 研究資料を見れば、不具合を治す方法だって書いてある。


「これね……ふふっ、マヌケだったわね。こんなものを残しておくなんて」


 お陰で楽に功績が掴める。

 そう思って、資料に書いてある手順通り、刻まれた魔法式に別の式を追加する。

 資料からすると不具合の箇所を見つけ、自動的に修正する式らしい。

 が、これが罠だった。


 突然発魔所がガシュンと音を立て、全ての機能が一時停止する。


「な、なんなの? どうして!?」


 焦るシスティーナ。

 マヌケは彼女のほうだった。

 アリスティアはわざと、この資料を研究室に残していた。

 偽りの情報を記載して、システィーナがひっかかるように。

 彼女が知らないうちに刻み込んだのは、生成した魔力を一気に全て、遠く離れたレイニグラン王国に移動させるもの。

 魔法式は発動後に消えて、数分後に設備は再起動する。

 壊れてしまっては魔力を横取りできないから、アリスティアも破壊までは考えていない。

 しかし、一時的とはいえ国中に魔力を供給する機関が停止した。


「今のはなんだ?」

「王城の照明が消えたぞ? 発魔所はどうなっている?」

「――システィーナさん! これはどういうこと!」


 案の定、パニック状態。

 この責任を取らされるのはもちろん、修理を担当したシスティーナだ。

 怒りに満ちた表情で室長が走ってくる。


「わ、私はただ資料通りにしただけで」

「言い訳は後で聞くわ。一緒に来なさい。陛下に報告しに行くわよ」

「……は、はい」


 何度でも言おう。

 これは序章である。

 彼女の絶望は、不幸は、始まったばかりなのだ。

 もっとも同情の必要はない。


 自業自得、なのだから。

ここからスカッと展開も増えます!

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