キャラバンの痕跡。
「お団子とお茶、お待たせしました!」
店員さんが、元気よく注文の品を持ってきてくれた。
「猫さんは、どうしますか?」
私の隣で丸くなっているせりを見て、店員さんは首を傾げた。
「大丈夫。ありがとう」
お礼を言って、銅貨を渡した。チップも込みなので、少し多めだ。
「ありがとうございました!」
お団子にかじりつきながら、私は門に目を向けた。
真珠国にはいくつか門があるのだが、キャラバンや商会の荷馬車が通るのは南の大門だ。
「ここで張っていれば、いいはず」
念のため、港はお稲荷さんに見張りをお願いしてある。
新しいキャラバンが、門を通ってきた。
ぴくり、とせりが反応した。片目を開け、耳をぱたぱたさせる。
反応が薄いから、御神体は持っていない。
しかし。
「こんにちは」
私は、そのキャラバンに声をかけた。
「どこから来たんですか?」
「うちは、コーラルからだよ」
「じゃあ、ムルを扱ってますか?」
「すまねぇな。途中の街で、全部売れちまった」
「そうですか。ありがとうございました」
ふむ、コーラルからか。
マップを出して確認する。
コーラルから真珠国、その途中にある街。
ルートは、分かった。
「ん?」
慌ただしくなってきた。
そろそろ門が閉まる時間だ。
真珠国の門は、夜は出入り禁止だ。
「そろそろ帰るよ、せり」
せりをキャットハウスに入れて、お社に帰った。
「お帰りなさいませ。御飯、用意出来てますよ」
菜飯に、里芋とちくわの煮物、ネギと油揚げのお味噌汁、それに茄子の漬物!
「美味しい……!」
昼間も団子やら飴やらいろいろ食べてしまったから、このままだと太ってしまう……。
「今日は、どうでしたか?」
「接触のあったらしいキャラバンがいたよ」
黒のキャラバンは、しばらく真珠国には近付かないだろう。
ならば。
私達は、黒のキャラバンに商談を持ちかけられたと思われるキャラバンを調べる事にした。
だだし、直接「黒のキャラバンを知っていますか?」と聞いても無駄だ。
とぼけるに決まっている。
だから、どこから来たのか聞いたのだ。
いくつかのルートが分かれば、黒のキャラバンが今、どの辺りにいるのかめぼしがつくはずだ。
せりのスキルで、最近、御神体に近づいた人間の気配を探ってもらっているのはそのためだ。




