今、出来る事。
「黒のキャラバン、ですか?」
何か知っているか、とたずねた私に、お稲荷さんは首を横に振った。
「いいえ」
うん、まぁ、予想通りだ。
「そやつらが、御神体を盗み出したのですか?」
「可能性は高いかな」
調べてみない事には、なんとも言えないが。
「どうやって、調べるおつもりですか?」
正体不明の相手だと聞いて、お稲荷さんは不安そうにしている。
「もしかしたら、っていう心当たりはある」
情報を持っているかは、正直五割程度の確率だが、やってみない事には始まらない。
「せり、キャラバンさんを『気配察知』」
あの時、知り合ったキャラバンの隊長さんに聞いてみよう。
ほかのキャラバンと、何かしらの情報を共有しているかもしれない。
せりはひげをぴくぴくとさせると、つんと顔を上げた。
「……せりさん?」
声をかけると、今度はぐぐっと胸を張った。
んー?
「キャラバンさん、もしかして、こっちに向かって来ているの?」
せりに声をかけると、頭をぐりぐりと押し付けてきた。
正解か。
真珠国にしかないものが多いから、キャラバンがこの国に立ち寄るのも当然だ。
「じゃあ、キャラバンさんが到着したら教えてね」
その間に、私はもう一度ギルドに寄ってみよう。
今まで盗賊に襲われたキャラバンを調べてみたら、何か共通点が見つかるかもしれない。
「……」
お稲荷さんの尻尾が、しょんぼりと垂れている。
「どうしたの?」
「……せっかく、もう少しで神になられるところだったのに」
お稲荷さんは涙目になっていた。
「心ない連中のせいで、穢されていたら……」
「……」
穢れがあったら、神にはもうなれないという事か。
「……落ち込むのは、結果が出てからにしよう」
「つかささん……」
「大丈夫。今は、出来る事をしよう。ね?」
お稲荷さんの頭をよしよしと撫でてから、はっとした。
つい、うちの猫達にやるようにしてしまった。
神使って言ってたし、気軽に撫でたらダメだったかも。
しかし、お稲荷さんはぐしぐしと前足で目をこすって顔を上げた。
「そうですね。泣くのは、あとにします」
「うん、頑張ろう」
「とりあえず、御飯にしましょうか」
 




