黒のキャラバン。
「おはようございます。朝御飯、出来てますよ」
「……おはよう」
お稲荷さんに、ぜひにと言われて、昨夜はお社に泊まらせてもらった。
……バチとか当たらないのかな。
いや、神様がご不在なんでした。
「お」
ご飯に、大根と油揚げのお味噌汁。焼き魚に、卵焼き。そして、納豆!
「美味しい……!」
「お口にあいましたか」
お稲荷さんは、嬉しそうにそう言った。
「それで、このあとはどうなさいますか?」
私もお手伝いします! とお稲荷さんは張り切っていたけれど。
「とりあえず、ギルドに行こうかな」
「ギルドですか?」
「今は、とにかく情報を集めないと」
盗賊がらみなら、ギルドに何かしらの情報があるはずだ。
まずは、そこから当たってみるつもりだ。
「なるほど。そうやって、探すものなのですね」
……今まで、どんな探し方をしていたんだ。
身支度を整え、ギルドへ向かった。
街は、朝から活気にあふれている。
やはり、この国は人の出入りが激しい。
見つけ出すのは、難しいか?
「?」
ギルドに行くと、掲示板の前に人だかりが出来ていた。
どれどれ?
「……」
掲示板には、最近の盗賊騒ぎは黒のキャラバンが原因らしい、と書かれていた。
黒のキャラバンとは、希少なお宝を扱うキャラバンで、その正体は不明。
非合法にお宝を売買していて、入手方法も正規のルートではないようだ。
「ん?」
発行したギルドは、私が手紙を届けるようにと依頼された所だ。
……もしかして、私が届けた手紙ってこれだったのか?
私が捕まえた盗賊どもから、聞き出したのか。
あのギルドマスター、意外とやるな……。
最近、黒のキャラバンは宝珠を手に入れたらしい。
それを狙って、盗賊がキャラバンを襲っている。
ただし、ほとんどのキャラバンは無関係だったという事だ。
「宝珠……」
御神体の事か。
んー?
お稲荷さんの言った通りなら、かなり大きな真珠だ。
しかも、神気が宿っている。
「普通の人間には、買えないよな……」
なら、相手は貴族や商人、王族……。
いや、神気が宿っているのだから、その国の神様に気付かれるはずだ。
国の中心である王族や大貴族は、自国の神様と距離が近い。
だとすれば。
「成り上がりの金持ちか……?」
ただ、あまりに希少なので、まだ売っていない可能性も捨てきれない。
まずは、黒のキャラバンを追うところから始めるか。




