猫です。ぱーとすりー。
「た、助けてくれ!」
「俺、高いとこダメなんだよぉ!」
知るか!
盗賊どもを叩きのめしたあと、おこんに出してもらった紐でぐるぐる巻きにした。
そして、現在。
さらに大きくなったりゅうたろうが、盗賊どもを縛った紐の先を咥えてぶらぶらとさせながら、馬車の隣を歩いていた。
ギルドへの報告もあったので、護衛を兼ねて、乗り合い馬車に乗る事にしたのだ。
「猫さん、すごいね」
子供達が、にこにこしながらりゅうたろうを眺めている。
「大きいわねぇ……」
答えるお母さんは、まだ呆気に取られているようだ。
「いやぁ、助かったよ」
御者さんは、何度もそう言った。
「あんた達が通りかかってくれなかったら、どうなっていたか」
「この辺って、盗賊とか多いんですか?」
「いや、この辺りは平和なもんだよ、いつもは」
だから、特に護衛も雇わなかった、と御者さんはそう言った。
旅の護衛も、冒険者の仕事だ。
商人などは馴染みの冒険者パーティがいたりするが、安さが売りの乗り合い馬車はよほどの事がない限り、護衛を雇ったりはしない。
その代わり、となり街までといった短距離移動が主だ。
街の入り口で、馬車とは別れた。
少ないけど護衛の料金をギルドに渡しておくから、と御者さんに言われたので、ありがたく受け取る事にした。
通りかかっただけだから、別に無料でも良かったのだが、そうするとほかの冒険者も同じ扱いをされてしまう。
こずるい依頼者もいるから、「基本的にギルドを通すように」と、どの冒険者も登録時にさんざん言い聞かされるのだ。
「すいません、盗賊捕まえたんですけど」
「おう、ご苦労さん」
この街はあまり大きくないので、ギルドも小規模だ。
受付も、お姉さんと、私が声をかけたギルドマスターと思われる男の人の二人でやっているようだ。
「ぴくともしねぇけど、生きてんのか、あれ?」
「大丈夫です。多分、気持ち悪いだけなんで」
紐の先で、ずっとぶらぶらさせられていたのだから、気分くらい悪くなるだろう。
「盗賊捕縛、と。乗り合い馬車からも護衛の料金が出てるな」
「ところで」
りゅうたろうを上から下までじっくりと見ると、ギルドマスターは首を傾げた。
「あんたの使い魔、でっけぇな。 ありゃ、なんだ?」
「猫です」
「…………」
 




