巨大魔方陣、発動……?
「ならば、あれを発動させるしかない」
あれ? まさか、巨大ロボとか出てこないだろうな。
「《●◆▽◇▲》」
何を言っているのか聞き取れない。
自動翻訳機能でも、無理な事もあるのか。
「……?」
空気が不快にゆらめき、部屋にあった蝋燭に順に灯りがともる。
「この塔全体にほどこした魔方陣を発動させた」
「発動してしまった以上、お前達に打つ手はあるまい」
「……」
あー、悦に入っているところに悪いんだけど。
「これ無くても、発動するの?」
私が手に持っていたのは、地下に降りる時に使った蝋燭だ。
「な、なんて事を……」
あんな所に、置いておく方が悪いと思うけど……。
「ならば……」
「老師、まさかあれを!?」
「お止めください!」
内輪揉めが始まったようだ。
「我が生涯をかけて開発した、禁断の魔法」
「あれを使ったら、街がどうなるか」
はあ!?
「かまうものか。ここまで虚仮にされて、黙っていられる訳がなかろう」
待て、こら。
お前のプライドのために、街を道連れにする気か!?
「この塔の周囲には、幾重にも結界が張り巡らしてある。我らには影響あるまい」
しかも、自分達だけ助かるつもりなのか?
どこまでクズなんだよ!
「《▼□▲★◎■○◇》」
「よつば、『解除』!」
よつばが耳を伏せる。
まさか、解除出来ないのか?
女神様の結界さえ解除したよつばが?
言葉を聞き取れない事と、何か関係があるのか?
落ち着け! それは、今考える事じゃない!
「キング、『空間転移』!」
こうなっては、女神様に頼るしか方法がない。
その時、くぅが魔導師達の前に飛び出した。
あおおおっ、とドスのきいた唸り声をあげ、逆立てた毛がばちばちと静電気を起こしている。
「くぅ、ダメ! 戻りなさい!」
チャビが、キャットハウスから飛び出してきた。
「チャビ!」
にゃーん、とチャビが鳴いて呼ぶが、くぅの耳には届いていないようだった。
妙に静かだと思っていたが、福助が首輪をつけられたのを見た瞬間から、ずっとキレていたようだ。
……仕方ない。
おこんをキャットハウスから出す。
「キング、みんなを連れて女神様の神殿に『空間転移』」
キングが私の顔をじっと見た。
「私は、くぅを置いていけない。分かるよね?」
多分、チャビもくぅを置いてはいけない。
「キング! 行きなさい!」
キングが目をぱちりと閉じて、猫達とみうが姿を消した。
チャビを両手に抱きかかえる。
その時、小さくなったりゅうたろうがひらりと肩に乗ってきた。
「りゅうたろう!?」
あんた、キング達と一緒に行かなかったの!?
小さくなっていたから、残っていた事に気付かなかった。
くぅの回りを、細い炎が渦巻いている。やがて、それは数百の炎の剣に姿を変えた。
魔導師達が口々に呪文を唱えている。
どうする?
くぅを止めるか? やらせるか?
街をどうする?
考えろ、私!
 




