魔導師達。
「私達はやつらの所に行くけど、あなたはどうする? どこかに隠れている?」
少女は、きりっと唇を噛み締めた。
「……一緒に行く」
「分かった。キング、この子の事もお願いね」
キングが少女の足に頭をこすり付けると、表情が緩んだ。
「私は相田つかさ。猫達は……」
「見ていたから、知ってる」
少女は、ぼろぼろの服の裾をぎゅっと握った。
「いつも楽しそうで、羨ましかった。私も、あんな風にって……」
「……あなたの名前は?」
「私は、みう。エルフ語で綺麗な雨っていう意味」
「みう、行くよ」
「……うん」
所々に仕掛けられている罠や魔方陣を解除しつつ、塔の最上階を目指す。
ずっと囚われていたらしいみうの事が心配だったが、特に辛そうでもなく、私達についてきた。
もしかして、エルフって人間より体力あるのか?
最上階につくと、やたらと重々しい雰囲気をかもし出している扉があった。
……まぁ、ここだろうな。
どうして、悪い連中ってのは高い所にいたがるんだか。
いっちょ、派手にいきますか。
「福助、『風魔法』。吹き飛ばして!」
ごおっという音と共に激しい風が吹き荒れ、扉がめきめきと割れて粉々になった。
中に入ると、案の定、魔導師が待ち構えていた。
ほとんどが男で、全員がフードのついた黒いローブを着ていた。
「お邪魔してまーす」
わざとらしく明るい声で言うと、やつらは薄ら笑いを浮かべた。
「知っている」
いや、いや。あれだけ派手に暴れていたんだから、気付いていない方がおかしいだろ。
なに、カッコつけてんだよ。
「ケジメつけてもらいにきたよ?」
「愚かな。ただびとが、我々に勝つつもりでおったか」
「んー、やるのは私じゃないしねぇ?」
「たかが猫」
……その猫に、街を滅ぼされそうになったんだろうが。
「《発動》せよ」
「!?」
福助の足元に、魔方陣が現れた。
「よつば、『解除』!」
ダメだ、間に合わない!
福助は身動きが出来ないようだった。
魔導師が福助に近付き、鎖のついた首輪をつけた。
「これで、こいつは魔法が使えない。ただの猫だ」
「……」
どいつもこいつも、へらへら笑ってんじゃねぇよ。
「福助! やれ!!」
「聞いてなかったのか? 魔法は……、痛いっ!」
福助が、首輪をつけた魔導師の手に思い切り噛みついた。ついでに、顔をめちゃくちゃに引っ掻いた。
魔法だけ封じたってダメだろ。牙も爪もあるんだよ、猫なんだから。
どうせ、くぅの時だって、魔法を封じたからって油断して逃げられたにちがいない。
学習しない連中だ。
それに。
福助は後ろ足で首輪を蹴ったり、体をぐねぐね動かしている。
やがて、がちゃんという音を立てて、輪になったままの首輪が床に落ちた。
「なっ……!?」
うちの猫達、首輪抜け出来るんだよな……。




