迫りくる危機。
「キング、『空間転移』。目的地はターコイズ」
嫌がってないで、さっさとしなさい! 緊急事態なんだから!
「あら、お久し振りです。旅に出たんじゃ……?」
「達成済みの依頼書って、どこにあるの?」
「それなら、右の棚にありますよ」
この世界に、知り合いはほとんどいない。
ギルドのお姉さんや、ラーラ達ラピスラズリの人間が何か仕掛けてくる理由はない。
心当たりがあるとすれば、しつこく依頼を出していた魔導の塔だけだ。
事務処理スキル、発動!
……。
…………。
……………………。
ない!
「おかしいな。絶対これがらみだと思ったのに…」
んー、もしかして?
新しく書類の束を取り出してきた。
再び、事務処理スキル発動!
……。
あった!
小型のドラゴンの目撃情報関連の依頼は取り下げられていた。
つまり、魔導の塔はドラゴンではなく、猫だということを認識したのだろう。
猫を連れて歩く人間は珍しいから、見つかってしまったのかもしれない。
日付を確認すると、コーラルの水かけ祭りの日だった。
……待てよ。
コーラルでは、りゅうたろうはキャットハウスの中だったはず。
猫を連れていないのに、特定したということは。
つまり。
まずい! 私の素性がばれている!
「よつば、『解除』」
よつばが前足をちょいちょいと動かし、私に仕掛けられていた「なにか」を解除した。
これで、向こうにも私が気付いた事を知られてしまっただろう。
一刻も早く、ここから離れないと。
「りゅうたろう、行くよ」
小さくなったりゅうたろうが、ひらりと肩に乗った。




