58/212
あとのまつり。
屋台で、凍らせたムルを買った。
綺麗な水の中でしか育たない果物で、甘い桃のような香りがする。
溶けかかってシャリシャリしているのが美味しい。
「……」
結局、最期の最期まで私は猫の事を考えていたようだ。
あそこまでいくと、猫ばかというより、もはやただのばかだ。
「ミーコさん、迎えに来てくれてたのかな……」
ミーコさんは、私が子どもの頃に飼っていたトラネコだ。
ものすごく頭が良くて、家の戸を勝手に開けて出入りしていた。
面倒見もよくて、近所の野良猫に自分のご飯を食べさせたり、寒い日はこたつに入れてやったりしていた。
こたつに足を入れたら、知らない猫が寝ていて、死ぬほど驚いたこともあったな……。
ムリヤリ抱っこすると、やれやれという風にため息をつかれた。
もしかして。
ミーコさんが、猫神様に頼んでくれたのかな。
まだ、猫達と一緒にいさせてあげて下さいって。
「……」
ムルの上に、ぽたりと水滴が落ちた。
ダメだ、しょっぱくなってしまう。
せっかく美味しいのに。




