立ち込める暗雲 ……いや、比喩であってね。
「黒い猫って、くぅ?」
「わからない……」
ラーラは困った顔をした。
黒い猫は三匹いる。
「福助、せり、くぅ。出てきて」
もう一度、ラーラにたずねた。
「どの猫?」
福助達を順番に見て、ラーラはますます困った顔になった。
「わからない……」
「……」
私には分かるけど、猫初心者のラーラには区別がつかないようだった。
「教えてくれて、ありがとう」
うん、と小さく頷くと、ラーラは真剣な目で私を見た。
「ねこ、まもって」
「うん、大丈夫。絶対に守るから」
……私より猫達の方が断然強いのだが。
それでも、私にとっては守るべき存在だ。
「よろしければ、しばらくここに滞在なさっては?」
長老さんの言葉はありがたいが、訳ありであろうこの村を巻き込んでは申し訳ない。
……うちの猫達が、村ごと消しかねないし。
「大丈夫です、ありがとう」
私達は、早々にラピスラズリをあとにした。
「……」
やはり、どう考えても一番危ないのはくぅだ。
アレキサンドライトの事で、目をつけられている。
ただ、福助も森一つ消したり、クラーケンを吹き飛ばしたりと派手な事をしているので、可能性は排除できない。
「せりは、大丈夫かな……?」
スキル自体が身を潜める事に特化しているし、トルマリンは港町だったから猫がたくさんいた。
危ない事は分かっていても、何が理由なのかは不明だから手の打ちようがない。
「一ヶ所に長居しない方がいいか……」
旅に出たのは、正解だったかもしれない。
のんびりゆったり、のつもりだったのだが。
「雲行きが怪しくなってきたな……」
思わずため息をつくと、ぽつりと顔に水滴があたった。
空を見上げると、黒い雲でおおわれていた。
降るな、これは。
今日は、ここで休もう。
テントを用意する。
「みんな、出てきていいよ」
大丈夫。
きっと、守ってみせるから。




