九つの猫の魂。
「すいません、すぐに出て行きます!」
慌ててそう言ったが、殺気だった雰囲気は変わらなかった。
どうしよう。
りゅうたろうが首をかしげてみせたが、多分こっちが悪いのに攻撃するのもな……。
「猫……?」
ん?
りゅうたろうを見た途端、空気が変わった。
「猫を連れているみたいだぞ」
「じゃあ、こいつ……、この人が?」
んん?
猫がいるから、どうしたっていうんだ?
「……すまないが、長老と話をしてくれないか」
「はい。なんか、ご迷惑をかけたみたいですみません……」
さっきの様子からすると、結界か何かで隠れて暮らしていたのに、私達がいきなりぶち壊したみたいだし。
頭に血がのぼっていたとはいえ、軽率な事をしてしまったようだ。
全部、キングが悪い!
集落の広場のような場所に行くと、すでに長老さんらしき人が待っていた。
「すみません、ご迷惑をおかけしました」
「いや、こちらこそ申し訳ない」
長老がかたわらの少女を振り返った。
「この方なのか?」
「……わからない」
銀の髪と銀の瞳を持つ少女は、小さく首をふった。
「えーと……?」
状況が分からない。
「この子は、『さきみ』の力を持っているのです」
さきみ……先見か?
つまり、預言者みたいなもの?
「九つの猫の魂が、私達を救ってくれると」
……それ、猫神様の事では。
「すいません、人違いだと思います」
もしかしてとも思ったけど、うちの猫達、八匹だしな。
「結界の事は、こちらが悪いのでなんとかします」
悪いけど、女神様に頼んでみよう。
結界を張るのは得意だって言っていたし。
「ところで、ここは……?」
「ここはラピスラズリ。《ことわり》からはずれたものの住む村です」
《ことわり》からはずれたもの?
「それは……」
何もないところから、不意に白黒の猫が姿を現した。
「キング!」
キングは私に駆け寄ってくると、膝の間に潜り込んできた。
どうした、何があった!?
 




