空中戦。
空気を震わすほどの巨大なドラゴン。
「…………」
私は呆気に取られて、空を見上げていた。
ドラゴンって、あんなに大きいんだ……。
ゲームや漫画でもよく登場するけど、人間サイズであれを攻撃するなんて、主人公ってやっぱりすごいな……。
いや、いかん。
あまりの事に、現実逃避をしていた。
真面目に対処法を考えなければ。
女神様は、大きくなったりゅうたろうならドラゴンなど ぷちっ! だと言っていたが。
それ、ドラゴンが地面にいてくれたらの話だよね……。
福助の風魔法も、あそこまで届くかどうか。
「…………」
オニキスの衛兵達が弓矢で射っているが、やはり届いていない。
「おこん」
キャットハウスからおこんを呼び出した。
こんな状況だというのに、おこんはわくわくしたような顔をしていた。
「『創成魔法』、でっかいキャットタワー」
ぼんっ。と音がして、空にそびえるほどのキャットタワーが出現した。
「りゅうたろう、最大」
大きくなったせいで、「隠密」の状態にはしておかれない。
突如姿を現したりゅうたろうに、衛兵達が新手かと身構えた。
「りゅうたろう、ドラゴンを叩き落として!」
りゅうたろうが、キャットタワーをひらりひらりと駆け登る。
……私の肩に乗る時も、あれくらい華麗にやってくれないものかな。
キャットタワーのてっぺんで、りゅうたろうがふりふりとお尻をふって狙いを定めている。
虫を叩き落とすつもりでやれば、楽勝だ!
……まぁ、相手はドラゴンですけど。
空中に飛び上がったりゅうたろうが、前足でドラゴンを叩き落とした。
「おこん。りゅうたろうの下に、大きなクッション!」
ふかふかのクッションの上に、りゅうたろうが降りてきた。
猫だから大丈夫だとは思うけど、念のためだ。
地面に叩きつけられたドラゴンは、起き上がろうともがいている。
「よつば。ドラゴンの魔法とスキルを『解除』」
よつばが前足をちょいちょいと動かした。
「おこん。ドラゴンに、でっかいペットキャリー」
おこんが嫌そうに、地面をしっぽでばんばんと叩いている。
違うから。おこんを入れるんじゃないから。
ね?
がしゃこんっ、とドラゴンが巨大なペットキャリーの中に閉じ込められた。
「なんとかなった……」
しかし、目の前には、空にそびえるほどのキャットタワー、大きなクッション。そして、巨大なペットキャリーに閉じ込められたドラゴン。
シュールだ。
「これ、無限収納に入るのかな……」




