猫に小判。
「ここがオニキスか」
山岳地帯にある城塞都市オニキス。
石造りの建物が並び、街の周囲を堅牢な塀で囲んでいる。
ここはたびたび魔物の襲撃を受けるらしく、衛兵らしき人達が警戒態勢を取っていた。
街の外れでは、崩れた塀の修復作業が行われている。
なるべく早く猫を見つけて、ここから離れた方がいいかもしれない。
「あれ?」
ここにも神殿があるのか。
「んー?」
女神様の神殿と比べて、随分と寂れている。
「ま、いいか」
とりあえず、拝んでいこう。
「猫達が無事でいますように」
ついでに、何もやらかしていませんように……。
「お姉さん、拝んでもムダムダ」
「え?」
地元の人らしきおじさんが、ひらひらと手を振った。
「運命神様は、人間の願いなんか聞いてくれないからな」
運命神?
「そうなんですか?」
「何があっても、『それが運命だと思って受け入れろ』ってのが運命神様だからな」
「あー」
なんとなく、人気のない理由が分かった。
運命って言われてもねぇ……。
いろんな神様がいるもんだ。
それはさておき、猫を探さなくては。
この街にいるのは、おこん。
うちの猫達の中では、最年少のおてんば娘だ。
「スキルは……」
創成魔法(無制限)。
「………………」
無制限!?
そんな無茶苦茶な……。
いや、待て。
相手は猫だ。そして、おこんだ。
どんなにチートだったとしても、自分の知っている、というか、自分の興味があるものしか作り出さないはずだ。
まぁ、そんなには危なくはないだろう。
……ほかの猫達と比べての話だけど。




