29/212
そんな気はしてました……。
しばらくすると、せりがそろーっと近付いてきた。
私はチャビをそっと撫でた。
「チャビ、『回復』」
チャビがごろごろ喉を鳴らし始めた。
チャビの「回復」は強力だけど、副作用もある。
ごろごろ喉を鳴らしているのを聞くと、眠くなってしまうのだ。
案の定、せりもうとうとし始めた。
慎重に、焦らず、落ち着いて。
私はがしっとせりを捕まえた。
せりはそのまま膝の上に乗ってきた。
本来は甘ったれなのだ。
「本当に、あんたって子は……」
よしよしと撫でてやる。
「チャビもありがとう」
いや、もうごろごろはいいから。
ところで、せりさんや、そろそろ撤退したいんだけど。
いい加減、心が折れかけています……。
くわっとせりが目を見開いた。
耳を伏せたイカミミ状態で、警戒態勢を取っている。
これ、「気配察知」……?
あれ、そういや、食堂のおじさんが……。
大きな水音がして、港の近くに巨大な影が現れた。
クラーケンだ。
「でか……」
何、あれ。
たこ焼き何個分だよ!




