恥も外聞も捨てました。
「よし、罠を張ろう」
あれから何度トライしても、せりは捕まらなかった。
もう少し、というところでスキルを使って逃げられるのだ。
とはいえ、私の近くをうろうろしているのだから、本気で逃げる気はないはずだ。
悪い事をした時などは、猫だって気まずい顔をする。
おそらく、せりは私が怒っていないか様子をうかがっているのだ。
ならば。
「猫寄せほいほいを設置だ!」
出来るだけ静かで、人通りの少ない路地を選ぶ。
ここは、特にせりを多く見かけた場所だ。
ビニールシートの上にふかふかのラグを敷き、ローテーブル、クッションを設置。
コーヒーとお菓子、本も用意した。
リラックス要員として、チャビを呼び出す。
私はどっかりと座り込み、本を読み出した。
猫というのは追いかけると逃げるが、こちらが気付かないでくつろいでいると意外と向こうから寄ってきたりする。
人通りが少ないとはいえ、街の中だ。
ときおり通りかかる人達の視線が痛い。
仕方ない。
もはや、なりふりなどかまっていられない。
とはいえ、メンタルはやられます……。
せり、早く来て!
 




