第五の猫、参上! ……して下さい。いや、ほんとに。
悩んでいても仕方ないので、とりあえず私は街の食堂に入った。
まずは腹ごしらえ!
「リプのフライ下さい。白ソースで」
「はいよ!」
リプはエビに似た食材だ。白ソースは、タルタルソースに近い。
ほどなくして、私のテーブルの上に注文した料理が置かれた。
「いただきます」
うん、衣がサクサクで、リプはぷりぷりしていて美味しい。ソースは元の世界と比べると、少し物足りない。
「支払いはガリルでいいですか?」
私の言葉に、食堂のおじさんは笑顔になった。
ガリルというのは、この世界の共通貨幣だ。
それぞれの国でも各自の貨幣があるが、信頼価値が高いのは断然ガリルだ。
商会など大口の取り引きには、必ずガリルが使われるらしい。
「ところで、最近変わった事ってなかったですか?」
「変わった事?」
食べ物が食い尽くされたとか、地形が変わったとか、古い建物が真新しくなったとか……。
「そういや、クリスタルで女神様が降臨なさったとか」
あ、それはいいです。
「この辺りは魚以外、何もないからなぁ」
「そうですか……」
「あ、でも」
おじさんがちょっと面白がっているような表情をうかべた。
「百年前くらいに、クラーケンが出たらしい」
「クラーケン……」
って、確か大きなタコのお化けだよな?
残念ながら、せりには関係なさそうだ。
「ごちそうさま、美味しかったです」
「またご贔屓に!」
さて、どうやってせりを探したらいいものか。
仕方なく、猫がいそうな細い路地を片っ端からのぞき込んでみた。
たまに猫はいたけれど、うちのせりではなかった。
「今日で五日目か……」
宿屋のベッドの上で、私はため息をついた。
身支度を整え、薄暗いうちに外に出た。
お腹空かしてないかな、怖い思いしてないかな、とそればかり考えてしまう。
今日も空振りだったかと思っていると、黒猫が路地に入っていくのが見えた。
後ろの左足を軽く引きずっている。
「せり……?」
ちらりと振り返った猫が私の顔を見た。
「せり!」
そして、せりは。
小走りに逃げ出した。
あのばか猫!
さては、薬を飲まされるとでも思ったな……。
慌ててあとを追うと、ふっとせりの姿が見えなくなった。
……なるほど、これが「隠密」スキルか。
なんて事してくれたんだよ、アホ女神!




