人々と神様とエルフ達。
「よく来たのぅ」
オパール王国に行くと、農耕神様がにこにことしながら出迎えてくれた。
「ルッコの実のジュース……です」
ぎこちない様子でジュースを持ってきてくれたのは、「さきみ」の力を持つ少女ラーラだ。
ラピスラズリの人々は元の場所に戻ったが、ラーラとその家族だけは農耕神様の神殿に残ったのだ。
ラーラの力を利用しようとするものがいても、農耕神様の預かりとなれば、そう簡単に手出しはできない。
「のうこうしん様、明日はしもがおりるよ」
「そうか。では、皆に伝えねばのぅ」
ラーラの「さきみ」の力と、農業を主体としたオパール王国は相性もいいようだ。
うん、もう大丈夫だね。
ラーラと農耕神様を見ながら、私は笑った。
「なんだい。殴り込みにいくなら、あたし達にも声をかけてくれればよかったのに」
火山都市ガーネットに顔を出すと、サナが不服そうに口を尖らせた。
火の神様からもらった魔炎石と合成した大鎌を燃やしてしまった話をすると、ナルシは頷いてみせた。
「大丈夫。《かあさん》も親父も、新しい武器を用意すると言って張り切っている」
ほどほどでお願いします……。
「あ、そうだ。兄貴、来年の春に結婚が決まってさ」
思わずナルシの顔を見ると、珍しく照れたような表情を浮かべている。
「つかさも猫達も、式に参加してほしい」
「もちろん!」
ただ、よつばが食べ尽くさないか不安だが。
「ああ、うん」
「それが問題だな」
三人で顔を見合わせて笑った。
真珠国は祭りの準備の最中だった。
「なんのお祭り?」
「感謝と、それに鎮魂を……」
どこか遠くを見ながら、お稲荷さんが静かに言った。
「来年には、御神体は神に成られます」
その前の禊なのだそうだ。
「船は、どうする?」
「……」
お稲荷さんは少しの間無言だったが、やがて静かな声で言った。
「つかささんがお持ちください」
我らには、もう必要のないものですから、と。
その言葉を聞き、私は笑って頷いた。
「つかさ、蜜飴持ってる?」
エルフ達の住む翡翠の森に行くと、挨拶もしないうちに、みうがたずねてきた。
今、エルフの間で蜜飴が空前の大ブームらしい。
長達の中には、いい顔をしないものもいるらしいが。
まぁ、でも、なんだかんだ言っても、エルフは食べたり飲んだりする事が好きだからな。
いずれ、長達も喜んで麦酒を飲むようになるにちがいない。
その様子を思い浮かべて、私は笑った。




