銀月草。
ゆっくりと日が沈んでいく。
やがて、真っ暗な森の中に、ぽつぽつと小さな明かりがともり始めた。
淡い銀色に光るそれが、依頼のあった銀月草だ。
小型のナイフを使い、丁寧に刈り取る。
そういえば、このナイフを使うのも久しぶりだ。
草刈り鎌は、いまや、完全な武器になってしまったしな……。
暗闇の中から、光る目が近づいてきた。
「……」
足音がしていないから、うちの猫だろう。
案の定、大きなホーンラビットをくわえたよつばが誇らしげに歩いてきた。
「お帰り」
「にあん!」
私の前に獲物を置くと、よつばは得意気に鳴いてみせた。
やがて、ぞろぞろと猫達が獲物をくわえて戻ってきた。
いや、だから、くぅさんや。
そのドラゴンは、どうやって持ってきた!
というか、この辺りはドラゴンなんかいないはずだけど!?
「くぅだからなぁ……」
もはや、魔王様はなんでもありだな。
「みんな、近くにいてね」
依頼のあった分は採取済みだが、もう少し採っておこう。
私以外に、あの小さな兄妹の依頼を受けてくれるような冒険者がいればいいのだが。
「にゃあ!」
せりが大きな声で鳴いた。
せりがにらみつけている方向に、ぎらぎらと光る複数の目があるのが見えた。
うーん……。
せりの警戒の仕方からして、たいした事はなさそうだな。
「みんな、適当にやっておいて」
「にゃん!」
おこんが張り切って駆け出した。
遅れをとるまいと、ほかの猫達も光る目に向かっていった。
よつばも行ったところをみると、食べられるやつだな。
私はしゃがみこみ、銀月草の採取を再開した。
なにやら、背後からどたばたとした様子が伝わってくる。
あ、そうだ。
「福助、『風魔法』は使わないでよ!」
銀月草を吹き飛ばされては困る。
「にゃ!」
暗闇の中から、声だけが返ってきた。
本当に、大丈夫だろうな……?
さて、こんなものかな。
「終わった?」
大きくなったりゅうたろうが、ワイルドボアをくわえて戻ってきた。
なんだ、ワイルドボアの群れだったのか。
猫達の仕留めた獲物を無限収納にしまい、テントで一眠りしてから帰る事にした。
チャビとくぅは、いつものように同じ猫ベッドに入った。
おこん、せり、福助は、それぞれお気に入りのクッションで丸くなる。
よつばはキャットタワーのてっぺんに登った。
キングは私の足元で丸くなり、りゅうたろうは布団の中にもぐり込んできた。
「……世界は、楽しい方がいいよね」
ねぇ? と声をかけるが、猫達はすでに眠りに落ちているようだった。
「お休み」
そう呟いて、私も目を閉じた。




