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一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。 もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?  作者: たまご
第九部 望む世界

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201/212

幼き依頼者。

ギルドも閑散としていた。


冒険者の数自体も減っているのだ。


魔物との戦いで命を落としたものもいるし、怪我が原因で引退せざるをえないものも多かった。


だが、それ以上に、心の折れてしまったものが多かったのだ。


魔物の大発生を目の当たりにし、何時間にも及ぶ戦闘と、命の危険と隣り合わせといった状況に、精神が悲鳴をあげてしまったのだろう。


小さな兄妹が、掲示板の前に立っていた。


「あの、冒険者の人ですか?」


「うん、そうだよ」


「おねがいです。僕たちの依頼を、うけてください」


そう言って、兄らしき子が頭を下げると、隣に立っていた小さな女の子もぺこりと頭を下げた。


「依頼?」


「薬草の採取ですよ」


受付の窓口にいた、どっしりとした女性が声をかけてきた。


「その子達のお母さん、病気で毎日薬を飲まないといけないんですけど、その材料になる薬草が手に入らなくて……」


「依頼料も、ちゃんとはらいます」


男の子が、握りしめていた銅貨を差し出してきた。


「……いいよ。採ってきてあげる」


私の言葉に、男の子はぱっと顔を輝かせた。


「ちょっと珍しい薬草で、この近くでは採れないんですよ」


受付の女性が、てきぱきと地図と資料を用意した。


おそらく、彼女もこの子供達の事をずっと気にかけていたのだろう。


「この森の周辺で生える銀月草って薬草で、夜にしか採れないんです」


昼の間は、採ると枯れてしまうらしい。


場所と、銀月草の特徴を確認する。


「……夜は、魔物が出る可能性も高いです」


「多分、そっちは大丈夫」


依頼書に書いた私のサインと、登録証明書を見比べていた女性がぎょっとしたように顔を上げた。


「まさか、あなたが《竜殺し》……!?」


「うん、まぁ、一応……」


「え……」


声に振り向くと、男の子が涙目で私を見ていた。


「ぼ、僕たち、そんなすごい人にはらえるほど、お金がありません……」


「おかあさんのくすり、とってきてもらえないの?」


妹も泣き出しそうだ。


「別に、それだけでいいよ」


銅貨を握りしめている、男の子の右手を見ながら言った。


「でも……」


「いいんだよ、本当に」


私がずっとやりたかったスローライフ。


猫達と一緒に、この世界を冒険するはずだった。


今いるここは、本当に、あの日わくわくしながら旅立ったのと同じ世界なのだろうか。



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