行く末。
みんな、しばらくの間は声を出す事も出来なかった。
ここにいるものは、それぞれアレキサンドライトに複雑な感情を抱いている。
サナとナルシの母親は魔導の塔に囚われていた。
エルフ達は、長の娘で「とおみ」の力を持つみうを囚われていた。
私は、猫達の力を狙われていた。
それは魔導の塔の連中がやった事で、街の人達は関係ないと、頭では理解している。
だが。
アレキサンドライトに、軽い嫌悪感のようなものを感じていた事は否定できない。
しかし、滅べばいいとまでは思っていなかった。
『猫神が、近くの街のギルドに知らせたそうです』
今頃、各ギルドで連絡を取り合っているだろう。
いずれ、起きるかもしれないという不安が、まさに的中してしまったのだ。
複数の大都市や国に、同時に黒い霧が発生した場合は対応しきれるのか、という事は盛んに議論されていた事だ。
昨日は、アレキサンドライトと真珠国にほぼ同時に黒い霧が発生した。
「一度、ガーネットに帰る」
ナルシの言葉に、サナが頷いた。
「《かあさん》にも、助けてもらった方がよさそうだね」
サナの言う《かあさん》とは、火の神様の事だろう。
「我々も森に帰る」
エルフ達もそう言った。
長達の判断をあおぎたいのだそうだ。
ガーネットと翡翠の森は大丈夫だろう。
けれど、ほかは?
特殊な都市ではあったが、魔法を使った防衛は出来ていたはずのアレキサンドライトが滅んだ。
元々、戦闘に向いていないオパール王国や神聖王国クリスタル、それに学園都市トパーズなどに黒い霧が発生した場合はどうなる?
『つかささんは、どうします?』
一度、クリスタルに戻ってきますか? と女神様が言った。
「……いや、私達はうろうろしてみる」
一人で考えたい事もあるしな。
『分かりました。猫さん達の写真や動画、ちゃんと送ってくださいね?』
無理やり出したような、明るい声で女神様が言う。
「うん、分かった」
女神様も気をつけて、と言って電話を切った。
「じゃあ、いったん解散だね」
槍をかつぎながらサナが笑った。
「みんな、気をつけて」
私の言葉に、全員が静かに頷いた。
お稲荷さんが、姿勢を正した。
「皆様の無事を、お祈り申し上げます」
第八部 完
これにて、第八部終了となります。
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「……!」
「いや、うん。りゅうたろうの言いたい事は分かるけど、やっぱりそれはダメだと思うんだ」
「分かるんですか? くっ、まだまだ猫修行が足りませんでした……!」




