衝撃。
「あ……?」
スマホに、女神様から連絡が入った。
外は明るくなりかけている。
「んー、なに……?」
『……大変な事になりました』
「うん……?」
『アレキサンドライトが、壊滅しました』
「え……」
寝ぼけていた頭が、無理やり覚醒させられたようだった。
お稲荷さんや、サナ、ナルシ、エルフ達も起こして、女神様の話を聞く事にした。
スマホの事は、女神様からもらったもので、異世界で使われている通信用の道具だと簡単に説明した。
スピーカーをオンにする。
『昨夜遅く、アレキサンドライト周辺で黒い霧が発生したようです』
魔法都市アレキサンドライト。
魔導の塔を中心に発展した都市で、異なる世界からきた、いわゆる《ことわり》をはずれたもの達の末裔が住んでいた。
もっとも、あまりに遠い昔の事なので、住民達にもそれを知るものはいなかったらしい。
「今は、どこも黒い霧に警戒していたはずだが」
ナルシの言う通りだ。
ギルドや都市などが主体となって、例え真夜中であろうと、霧の発生を見張っているはずだ。
『昨夜はあまりに夜の闇が深く、気づくのが遅れたのではないかと……』
「……昨晩は新月でしたからね」
お稲荷さんがため息をついた。
「結界は張っていなかったのか?」
エルフが首を傾げた。
『……あそこは、少し特殊なんです』
そういえば、アレキサンドライトには守護してくれる神様がいなかった。
それだけではなく、全てを自分達で行うため、ギルドもよそとは最低限の関わりしか持っていなかったはずだ。
「あそこの連中は、ほかのやつらを見下していたからね」
サナが苦い表情で呟いた。
サナとナルシの父親は、魔導の塔の出身だと言っていた。
火の神の娘の末裔で、のちにサナ達の母親となる人と一緒に塔を逃げ出したのだそうだ。
「結局、アレキサンドライトだけでは対応しきれなかったという事なんでしょうね」
真珠国も、私達が助けに来てくれなければ同じ事になっていた、とお稲荷さんが静かに言った。
「今からでも行ってみた方がいいかな?」
『…………』
私の言葉に、女神様はすぐには返事をしなかった。
『朝早くに、猫神がアレキサンドライトに入りました』
ミーコさんが行っているのか。
『その後、連絡がきましたが、もう必要ない。と』
「!」
つまり、それは。
黒い霧の事が周知される前に襲われた村と、同じ運命をたどったという事か……。




