海上戦。
巨大な魔導船が、滑るように進み出した。
それと同時に、空が晴れ、風も止み、海は凪いだ。
船は、現在の持ち主である私の意思に従って動く。
「りゅうたろう、ドラゴンちゃんと空から攻撃」
大きくなったりゅうたろうが、ひらりとドラゴンちゃんの背中に飛び乗った。
「福助、チャビ、くぅ。魔法で攻撃」
それぞれ、船の上で配置につく。
「せり、クラーケンを『召喚』」
「にゃあ!」
せりが大きな声で鳴くと、しゅわわと煙があがってクラーケンが姿を現した。
「よつば、おこん、キング。大丈夫……、ん?」
よつばは船首で海風を受けて、ふわふわの毛をなびかせている。
おこんは、縦横無尽にマストをかけ上っていた。
キングはふんふんと鼻を鳴らしながら、潮の香りをかいでいる。
「…………」
なんともないのかよ!
魔力を船の動力に使っているはずなのに、よつば達はけろりとしていた。
いや、うちの猫達を侮っていたな……。
「にゃあ!」
せりがイカミミ状態で鳴いた。
来たか。
空の向こうから、黒い固まりのようなものが近付いてくる。
波が盛り上がり、魔物達が姿を現した。
「りゅうたろう、福助、チャビは、空からくる魔物をやっつけて!」
「……!」
りゅうたろうを背中に乗せたドラゴンちゃんが、空へと舞い上がる。
「にゃ!」
福助の回りを、きらきらしたものが踊るように跳ね回った。
「にゃーお」
何故か、チャビはまったりとくつろぎながら返事をした。
……まさか、波に揺られて眠くなってないでしょうね?
「くぅとせりは、海の魔物をお願い」
「にゃお」
「……にあん」
くぅに船首を奪われたよつばが、不満そうに小さく鳴いた。
「にゃあ、にゃあ!」
せりは一生懸命に、クラーケンに話しかけているようだ。
さて、行くか!
船は私の意思に従い、魔物達の中へと突っ込んでいく。
福助の「風魔法」とチャビの「雷魔法」に、魔物達がばたばたと海面へと落ちていった。
りゅうたろうとドラゴンちゃんは福助達の魔法を避けながら、残った魔物を始末している。
くぅが「土魔法」で大岩を落とし、せりの指示をうけながら、クラーケンが海中の魔物達を倒していた。
そして。
マストの上で、おこんは魔物を引っ掻いて回り、キングは「影魔法」で船上を飛ぶ魔物達を拘束していた。
よつばは、角の生えた巨大なトビウオのような魔物をくわえて満足そうな表情を浮かべている。
そうか。それ、食べられるんだ……。
というか、あんた達、普通に戦闘にも参加するの!?
私の悲壮な決意を返せ!
いや、無事でなによりです……。




