合流。
急いで、お社に向かう。
「お稲荷さん!」
中に入ると、お稲荷さんがぐったりとした様子でうずくまっていた。
「大丈夫!?」
慌てて駆け寄り、お稲荷さんを抱き起こした。
「つかさ、さん……?」
「助けにきたよ」
「ありが……とう、ございま……す」
……なんだ?
お稲荷さんの身体がひどく軽い。
いや、それだけではない。
輪郭がぼやけ、うっすらとしている。
まさか、存在が消えかけているのか?
「私の力……では、これが、精一杯……」
ほろりと、お稲荷さんの目から涙がこぼれた。
「留守居役も、果たせず……、くやしや……」
「お稲荷さん、しっかりして!」
ダメだ、このままだと消えてしまう!
不意に、キャットハウスからチャビが出てきた。
ごろごろと喉を鳴らしながら、お稲荷さんの顔をぺろっとなめた。
「!」
腕の中に、重さが戻ってきた。
輪郭がくっきりしてくる。
お稲荷さんは驚いたように目を開けて起き上がった。
「戻った……?」
「大丈夫? どこか苦しいとかない?」
お稲荷さんが慌てて首を振った。
「むしろ、力がみなぎるようです」
チャビが満足そうに、お稲荷さんに頭をこすりつけた。
チャビの「回復」は農耕神様にも効果があったみたいし、まぁ、お稲荷さんに効いても不思議ではないか。
しかし、消えかけた存在を復活させるとはな。
「黒い霧は、国の中には入り込んでいない?」
「はい、大丈夫です」
私の言葉に、お稲荷さんはきっぱりと言いきった。
「私の全ての力で防いでいましたから」
やはり、それで力を使い果たしたのか。
「港も大丈夫?」
お稲荷さんのふさふさのしっぽが、小さく揺れた。
「今は大丈夫ですが、魔物が来たら防ぎようがありません……」
「そっちは、私達が対応する」
霧の犠牲者がいないのなら、キャラバンの護衛についてきた冒険者達にも協力してもらおう。
門を閉ざして、塀の上で迎え撃つのが今のところ最良か。
それなら、空からくる魔物を警戒すればいいしな。
港は門も塀もないから、絶対に通すわけにはいかない。
うちの猫達が討ちもらした場合を考えて、信頼できるバックがほしい。
ひょい、とせりがキャットハウスから顔を出した。
嬉しそうに「にゃあ!」と鳴いた。
「つかさ、来たよ」
「……」
紅い穂先の槍を肩にかついだサナと、無言でせりに近づくナルシがお社に入ってきた。
「つかさ!」
エルフの遊撃部隊も間に合ったようだ。
「私達は港に」
「あいよ」
「お稲荷さんは、冒険者達に指示を出して」
「……はい」
よし、行こう!




