懸念。
オパール王国での戦闘を終えた私達は、農耕神様の神殿に顔を出す事にした。
お菓子やお酒などをたくさん買い込み、無限収納に入れる。
結界の中に隠れ住み、そのあとミーコさんに匿われていたラーラ達ラピスラズリの住人は、今は農耕様の神殿に預かってもらっているのだ。
ミーコさんは、別の世界に一時的に匿っていたそうだが、長い間滞在すると、あまりよくないそうなのだ。
世界にもよるらしいが、慣れないうちは体調を崩しやすくなり、重い病気になる者も出てくるらしい。
まぁ、環境どころか、世界が変わるのだからいろいろあっても仕方がないだろう。
……うちの猫達は、何故かけろっとしているが。
それどころか、順応しすぎていろいろやらかしていたけどな!
農耕神様の神殿に入ると、建物の裏にある畑に案内された。
女神様の神殿の奥には聖地と呼ばれる泉があったが、農耕神様の所は畑らしい。
さすが、というべきか。
「こんにちは」
「あ、猫の人」
「…………」
そうか、ラピスラズリの人達には、まだ「猫の人」なのか。
いや、うん。《竜殺し》より、いいけどな。
「お土産、持ってきましたよ」
私の言葉に、子供達がぱっと顔を輝かせた。
「蜜飴ある!?」
「焼き菓子は!」
「たくさん買ってきたよ」
無限収納から取り出すと、子供達だけではなく大人達も寄ってきた。
「お酒もありますよ」
「ありがとうございます!」
ラピスラズリの人達は、隠れて、逃げて、今もこの神殿の外には出られない。
ラーラの「さきみ」の力のせいもあるが、それにより、村の人達の運命も変わったのだそうだ。
何度も救われた。
そう言っていたが。
それは、おそらく運命神の《ことわり》からはずれた事だったのだろう。
ここにいる人達は、運命神にとって、とうに命を終えていなければならない存在なのだ。
真珠国から分かれたもの達は捕まえたが、ラーラの「さきみ」の力を利用しようとするものもいるだろう。
さすがに、農耕神様の神殿の聖地には誰も手出しは出来ないだろうが。
……この生活は、いつまで続く?
いや、ラーラ達だけの事ではない。
黒い霧が発生し、それに魔物が誘き寄せられている現状も、いつ終わりがくる?
神様達が、運命神を説得するまで続くのか?
今は、まだいい。
だが。
「……」
私達も、人間やエルフ達も次第に疲弊していくはずだ。
この事態が収集するまで、本当に持つのか……?




