集中してください。
「フラー?」
エルフ達が、空を見上げながら首を傾げる。
「災いを呼ぶ鳥って言われている」
羽毛は青く、尾羽の先だけが白い。
巨大な凶鳥の群れだ。
「家畜も作物も、人も食べる」
「人を喰うのか……!」
「一羽でも逃がしたら、大変な事になるな」
ただ、ドラゴンなどとは違って、ただの鳥だ。
うちの猫達なら、狩るのは簡単だ。
だが、以前よりも更に数が多い上に、魔物達の群れもいる。
「狩ればいいのか」
「なら、我らエルフも得意だ」
弓矢を手にしたエルフ達が、誇らしげに胸を張る。
「じゃあ、そっちはお願い」
「任せておけ」
無限収納からドラゴンちゃんを呼び出す。
「りゅうたろう!」
私の声に振り返ったりゅうたろうが、ひらりとドラゴンちゃんの背中に飛び乗った。
そのまま、ドラゴンちゃんは空へと舞い上がり、フラーの群れへと立ち向かっていく。
「合わせろ!」
エルフ達が弓矢をかまえる。
りゅうたろうを乗せたドラゴンちゃんはフラーの周囲を飛び回り、群れを固まりにする。
「放て!」
魔力を込めた矢が、フラーの群れを射ぬく。
ばたばたと落ちていくフラーに、りゅうたろう達がとどめをさした。
よし、あっちは大丈夫そうだな。
「みんな、いくよ!」
「にゃお……」
「……にゃん」
ん?
猫達から、先ほどまでの勢いがなくなった。
ちらちらとフラーを見上げている。
まさか、フラーを狩りたい、とか……?
いや、魔物に集中してくださいよ!
私一人で倒せるわけないでしょうが!
真面目に魔物退治にいそしんでいるのは、よつばだけだった。
ああ、フラーは食べられないんだったな。
というか、よつばがくわえているそれ、食べられるのか……。
「くぅ達は、魔物を倒して!」
しぶしぶといった感じで、猫達は魔物退治を再開した。
おこんなどは、諦めきれない様子で時折空を見上げている。
「にゃーおー……」
面倒くさそうに、チャビが「雷魔法」を魔物達に落とす。
「あぉぉぉ!」
りゅうたろうだけがフラーを狩っているのが気に入らないのか、くぅは私を睨みながら魔物達に炎をまとった岩を降らせている。
キングは、どうやら空を飛べる魔物がいないか物色しているようだ。
影を操って、フラーを狩りに行こうとしているのだろう。
「真面目にやりなさい!」
頼むから集中して!
片手間で魔物退治しないでください!!




