変化。
「にゃ……?」
福助が、困惑したように小さく鳴いた。
福助の回りを、きらきらしたものが何か言いたげに激しく動き回っているからだ。
「来たか」
マップを表示して、せりに声をかける。
「せり、『気配察知』」
せりはひげをぴくぴくさせ、やがてマップの一点を見つめてぴしっと胸を張った。
ふむ、ここか。
「キング、『空間転移』」
キングがぱちりと目を閉じると、微妙な浮遊感と共に私達は移動した。
「つかさ!」
移動した先には、弓矢を手にしたエルフ達の一団がいた。
「黒い霧は?」
「先ほど消えたところだ」
「じゃあ、私達がするのは魔物退治だけでいいんだね」
ここは、オパール王国の端に位置する街だ。
関所があるので、規模の割には人口は多い。
「警備隊は?」
「住民の避難誘導をしている」
どちらかといえば排他的な種族であったが、この現状は見過ごせないとエルフ達もほかの国や都市と連携を取る事にしたそうだ。
みうの「とおみ」の力で、黒い霧の発生している街などを探し、その地域を担当しているギルドや街に通達をするのだ。
戦力が足りないと判断すれば、今回のように遊撃部隊を派遣する事もある。
福助と契約している風の精霊を通じて、私達にも連絡がくる。
「そういえば」
若いエルフがこっそりと私に囁いてきた。
「麦酒を初めて飲んだが、うまかった」
基本的に、エルフは畑で栽培されたものや、家畜の肉は口にしないのだが。
エルフはお酒も好きだからなぁ……。
出先の街などで、こっそりと食べたり飲んだりする者がいるようだ。
遊撃部隊が、若いエルフ達で組織されている事も大きいだろう。
しきたりより、好奇心が勝るらしい。
「長達にバレないようにね」
そう言うと、エルフは分かっていると頷いた。
「ルッコの実を入れて焼いた菓子もうまかったから、妹達にも食べさせてやりたいんだが」
うーん、持ち帰るのは、さすがにマズいと思うけどなぁ……。
私の顔を見て、エルフはため息をついた。
「そうだよな……」
「蜜飴くらいなら大丈夫だと思うけど」
原材料のスカイビーの蜜は、採取してきたものだし。
「携帯食の一種として、提案してみたら?」
スカイビーの巣はエルフ達も採ってくるし、麦などを使ったお菓子よりは馴染みがあるだろう。
「そうだな。ま、最初は難しいだろうが」
試してみるさ、とエルフは笑った。
せりが、イカミミ状態で「にゃあ!」と鳴いた。
「!」
さて、雑談はここまでだ。
私は無限収納から、紅い刃の大鎌を取り出した。




